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漢字点心
2017年3月17日

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明治の文章を読んでいると、「串談」と書いて「じょうだん」とふりがなが付けてあるのに、出会うことがある。「串」の音読みは「カン」または「セン」。意味だって基本は「貫く」ことだから、「冗談」とは関係がない。初めて目にしたときには、誤植かと疑ったものだ。

調べてみると、中国の近世語に「串戯」ということばがあって、これは「人を笑わせるお芝居」を指す。昔の日本語では、それを踏まえて「じょうだん」を「串談」と書き表すことがあったようだ。「じょうだん」の語源は実ははっきりせず、「冗談」と書くのも、当て字の一種らしい。

島崎藤村は、「串談」をよく使う。特に、没落していく生家を描いた『家』では、一七回も用いている。滅びゆく旧家につかのまの笑いをもたらす「じょうだん」も、結局はお芝居にすぎない。そういう意識が、藤村の中にあったのだろうか。そう思って読むと、何ともやりきれない気持ちになる。(えんまんじ・じろう氏=編集者・ライター)
2017年3月17日 新聞掲載(第3181号)
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