連続討議 「文系学部解体―大学の未来3」 室井尚・ハヤシザキカズヒコ  なぜ誰も声を上げないのか/なぜ伝わらないのか?(10) 自由に振る舞うことから道は開ける|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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文系学部解体-大学の未来
2017年3月17日

連続討議 「文系学部解体―大学の未来3」 室井尚・ハヤシザキカズヒコ 
なぜ誰も声を上げないのか/なぜ伝わらないのか?(10)
自由に振る舞うことから道は開ける

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本村
今回初めて知ったんですが、デモをする時にも、「誰が責任を取るんだ」と厳しく問われるんですよね。警察署に許可を取りにいっても、身元を全部書かされる。あの時は、僕が許可を取って、もし何かあったとしても自分が捕まるだけだから、他の学生は存分に暴れてくれというぐらいの気持ちはあったんです。でも学生たちも少し弱腰で、就活のことを気にしたりする。このぐらいのことで就職が駄目になってしまうのか、そんなにも閉塞感があるのかなと思いましたね。
三浦
デモにしても、社会への異議申し立てにしても、日本には日本のやり方があると、僕は思っているんです。一般的には、日本人は事なかれ主義だと思われているけれど、実際に原発が爆発した時には、二十万人もの人々が集まる。憲法九条が変わるかもしれないという時にも、国会前に人が押し寄せる。これは事なかれ主義の逆で、何か起きそうという時には人が動くということだと思うんです。まずは、そういう感覚を大切にしたい。いきなり政治的な主張で思想を押し付けても、日本人は動かない。それが日本人の持つヌルッとした心性で、そのことを最近考えています。
ハヤシザキ
デモの話で、みなとみらいに六十人集まって、抗議の行進をしたと言われましたよね。そのこと自体凄いと、僕は思います。うちの大学では、そこまで集めることすらできませんからね。なぜか。学長が脅しをかけるからです。たとえば課程存続の嘆願の署名を持っていただけで、「名前と課程を全員書け」「こんなことして、就職はどうなると思ってる」みたいに言われる。そんなこと言われたら、みんなビビってしまって、なんにもできない。学生らにしてみれば、警察にデモの許可を貰いにいくだけでも、かなり勇気がいることです。行動することには勇気がいる。この勇気の問題を、大学教員同士でもう少しシェアできないかなと思いますね。それと、今日ここで話している、こういう空間があること自体、とても大事だと思うんですね。何を言っても許される自由、それが保証されることを大切だと思わないといけない。
室井
ハヤシザキさんは「懲役三ヶ月」の処分を受けられて、ゼミ生はどうしていたんですか。
ハヤシザキ
三ヶ月の懲戒に加えて、一年間の授業停止処分も受けていましたから、他の先生のゼミに引き受けられていきました。
室井
停職三ヶ月だけかと思ったら、一年間の授業停止ですか。
ハヤシザキ
これも二重の不利益処分ということで争う準備をしているところです。
室井
敵も結構やりますね。「九州やくざ戦争」みたいな話ですよね。先日『仁義なき戦い』五部作をまとめてみたんですが、深作欣二って、人間や社会に対する見方が深くて、大学も会社も政治も、『仁義なき戦い』ですべて読み解けるなと思ったんです。派手にピストルを振り回す人間が、上にいくわけではない。大学の問題も、長い目で見たら、やくざの抗争みたいなものです。おそらく今後も、学長側は、ねちねちと手を打ってくるんじゃないですか。一年間の授業停止だけでも相当厳しいのに、「ハヤシザキをいびり出してやる」みたいな形で、嫌がらせをしてくることも考えられる。ハヤシザキさんは今、手足を奪われ、活動も制限されている。本当に厳しい状況にあると思います。しかしこうやって話をしていると、大学を、もっと自由で楽しい空間にしていこうという思いを感じます。その思いは、今の学長体制では、叶う見込みは少ないと思われますか。
ハヤシザキ
大学を楽しい場所にしたい、その思いは今もまったく変わりません。懲戒をくらっても、屈服はしていない。不当処分の撤回を求めながら、発言内容もほとんど変わっていません。ただ、次に懲戒処分をくらうとしたら、六ヶ月の停職かクビのどちらかです。だから積極的にゼミ生を取ることはしていません。そういう状況では、大学を楽しくするといっても、限界があります。手足を縛られていると言われれば、おっしゃる通りです。今日お話を聞いていて思ったのは、やっぱり文化や芸術、そういうことが自由にできる社会じゃないと、民主主義は育たないということです。そのことをひしひしと感じます。うちの大学でも、芸術課程とかにおもしろい学生が一番多いんです。でも、つぶされてしまって。僕が大学の周りで一緒に飲み明かしてきたような人たちがどんどん減っている。それが一番つらいですね。おもしろい学生が年々いなくなってしまった。大学のあり方に抵抗しているのも、そういう学生たちだったんです。皆さんも、暴れた方がいいですよ。大学生は自由なんだから。というか、自由を勝ち取らないといけない。自由を勝ち取ろうと思ったら、まずは、ひとりひとりが自由に振る舞うことからしか道は開けないと思いますね。

(おわり)
◇連続討議「文系学部解体―大学の未来」は、第1~3部(室井尚・内田樹・吉見俊哉・ハヤシザキカズヒコ)に、未掲載の第4・5部(室井尚・日比嘉高・増田聡・竹下典行・小林哲夫)を加えて、電子書籍として5月に配信予定です。 (編集部)
2017年3月17日 新聞掲載(第3181号)
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