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Forget-me-not
2017年3月24日

Forget-me-not⑫

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付き合い初めて7年になるブルンジ人ゲイカップルのフロリバート(左)とエマ(右)。ⒸKeiji fujimoto
僕たちはケニアのカクマ難民キャンプの中にある小さな飲み屋にいた。不法蒸留酒を安値で貧しい難民達に売る。こういう店はキャンプ内では珍しくなかった。

「それにしても、あとどれくらいここにいることになるんだろうねえ。ウガンダのゲイ達ばかりが難民として受け入れられていくけれど、僕たちブルンジのオカマ達にはなんの希望もないからね」

エマはお酒を飲むといつも愚痴っぽくなる。反同性愛法で有名なウガンダにばかり注目が集まり、周囲の国々に暮らす同性愛者達が海外の支援団体から無視され続けているという話をする時は尚更だ。

「ちょっと飲みすぎなんじゃないの?」

僕が軽く注意をすると、横ではエマの彼氏であるフロリバートがその通りだという風に頷いている。

奔放なエマとしっかりもののフロリバート。性格の異なる二人はまた運命的なカップルでもあった。周囲には秘密で付き合っていた高校時代、寮内で同性愛行為を発見されてブルンジを追われた。別々にケニアに逃げた一年後、辿りついた約15万人の人々がひしめき合う難民キャンプで偶然再開したのだ。

目の前では次の酒に手を伸ばそうとするエマをフロリバートが止めている。薄暗い飲み屋の中で、若き二つの顔が夜の闇に埋もれかかっている。

「さあ」フロリバートは付け加えた。「そろそろ帰って休もう」
2017年3月24日 新聞掲載(第3182号)
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