村上さんの物語はいつもきっと|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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2017年3月31日

村上さんの物語はいつもきっと

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村上春樹さんの新作が出るたび、過去作のいずれかを読み返すことになる。今回は『スプートニクの恋人』『神の子どもたちはみな踊る』『ねじまき鳥クロニクル』。心のどこかに解けない謎を抱えたまま、現実世界でもまれつつ年月が過ぎ、待望の新刊が出て、また少し違う角度から自分の中の謎を取り出して見る。
螺旋のようにゆるく続く時を持てることはしあわせなことだ。
そうした豊かな輪の一つとして、前作『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』でも登場いただいた鴻巣さんと中島さんに、今作も読み解いてもらった。目から鱗の批評多々。お二人の指摘は鋭く時折苦い。でもそれはたぶん、文学というものに対する励ましであり、「偽装された祝福」なのだ。

今作の「僕らは高く繁った緑の草をかき分けて、言葉もなく彼女に会いに行くべきなのだ」という箇所について話されていたとき、処女作『風の歌を聴け』を思い出していた。
その末尾、デレク・ハートフィールドという作家の墓を尋ねた追憶。「五月の柔らかな日ざしの下では、生も死も同じくらい安らかなように感じられた」。そこには「この小説はそういった場所から始まった」とある。村上さんの物語はいつもきっと、こういう場所から始まっているのだ、と思った。

鴻巣さん中島さんに四年前に対談いただいた【二〇一三年五月十七日号】も、近日「読書人WEB」で公開する。合せてお楽しみいただければ。 (S)

2017年3月31日 新聞掲載(第3183号)
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