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漢字点心
2017年3月31日

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「春風駘蕩(しゅんぷうたいとう)」の「駘」。現在の日本語では、この四字熟語以外に用いることはまずなかろうと思われる。とすれば、いったいどういう意味の漢字なのだろうか。

漢和辞典を調べてみると、「走るのが遅い馬」だとか、「馬のくつわが外れる」といった意味が載っている。なるほど、「馬へん」が付いているのはそのせいか、と納得はするものの、どちらも役立たずのイメージだ。そういわれれば、「蕩」の方だって、「放蕩」「遊蕩」「蕩尽」などなど、至ってしまりがない。「駘蕩」とは、漢字の並びの上では、のんびりを通り越して、かなりだらしない熟語なのだ。

とはいえ、そのだらしのなさこそが、「春風駘蕩」の魅力だろう。年がら年中、折り目正しく生きていくのは気骨が折れる。美しい花が咲きおだやかな風が吹くこの季節くらい、だらしなく過ごしてもいいではないか。人生には、速く走ることよりも大切なことがあるのだから。
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2017年3月31日 新聞掲載(第3183号)
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