ターザン山本(元『週刊プロレス』編集長・パピプペポ川柳創始師範)×レイザーラモンRG(お笑い芸人)対談 Vol.1 あるある考・前編 (全4回連載)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」

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2017年4月7日

ターザン山本(元『週刊プロレス』編集長・パピプペポ川柳創始師範)×レイザーラモンRG(お笑い芸人)対談
Vol.1 あるある考・前編 (全4回連載)

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大好評の「パピプペポ川柳」特集第2弾。今回はパピプペポ川柳創始師範で、元『週刊プロレス』編集長・ターザン山本さんと、「あるある」芸で大人気のお笑い芸人・レイザーラモンRGさんの対談が3月15日(水)に実現! 日本語の可能性を広げたパピプペポ川柳と、一言で笑いを生み出すあるあるがどう混ざりあうのか。そして、自らの師と仰ぐターザン山本さんに対しRGさんは何を語るのか。パピプペポ川柳愛好家をはじめ、お笑いファン、プロレスファン必見のトークを「週刊読書人ウェブ」限定、短期集中連載!!


世間のあるある・RGのあるある

ターザン山本(以下山本)
はじめに一般的なあるあるネタのルーツについて、あるあるネタでブレイクしているRGさんの見解を教えてもらえますか。
レイザーラモンRG(以下RG)
世の中であるあるという言葉が使われるようになったのは、バラエティ番組「発掘!あるある大事典」で始めてあるあるというフレーズが用いられた説と、僕の先輩芸人のバッファロー吾郎さんか千原ジュニアさんのどちらかが、よくある出来事を称してあるあると名付けて周知させた説の2つがあります。
山本
一時期、プロ野球の12球団を題材にしたあるある本が流行りましたよね。あれも結構前だったような記憶だけど。
RG
あるあるネタ自体、僕が持ちネタとしてやるずっと以前から使われていました。代表的なものでいえば、お笑いコンビ・レギュラーの代名詞「あるある探検隊」というネタや、ふかわりょうさんのネタが挙げられます。他にも多くの人があるあるネタを使っています。
山本
今ではあるあるネタというと、まずRGさんが筆頭に上がるよね。他の人のあるあるとどこが違うの?
RG
みなさんは1回のネタ見せの中でたくさんのあるあるを披露します。対して僕はあるあるを言う時、名曲にのせて「あるある言いたい」と替え歌を歌い続けるけれど、肝心のあるあるは1つしか言わない。結果的に、僕のあるあるは他の人との差別化を図ることに成功しました。一時、あるあるネタが多用され、世間一般に浸透した一方、あらゆるネタがあるあるの体をなしてしまいました。しかし今ではあるあるというフレーズそのものを使い続けた僕のネタが幸運にも生き残ることができました。

あるあるを掘り起こす

山本
僕が最初にあるあるという言葉を聞いたとき、頭に思い浮かんだのは、江戸時代の長屋住人たちの噂話なんです。噂話って些細だけど、面白い小ネタがたくさんあるじゃないですか。僕にとってあるあるというのは、小ネタ特有のユーモアとリンクしたものであって、面白い小ネタを駆使しながら、言語感覚を磨いていくというイメージなんです。RGさんは今もなお、あるあるの世界を開拓し続けていますが、あるあるについてどういう認識で捉えていますか?
RG
僕はあらゆるものにあるあるが存在すると思っています。そして僕は、世にあまねくあるあるを化石発掘のように掘り出す役目を担っているのだと自覚しています。
山本
万物にあるあるがあるんだ。どうしてその考えに至ったの?
RG
以前、東スポ紙面であるあるを毎週発表する、荒行のような連載をしていました。お題はその週にあったニュース、時事ネタ、スキャンダル、話題の人物などです。
山本
じゃあ、今仮にお題が出されるとしたら、WBCがトピックだから、「小久保監督あるある」が送られてくるわけだ。
RG
きっとそうでしょうね。ただ、いただいたお題に対する答えが全くわからないときがあるんですよ。でも答えを返さなければいけないから、必死になって情報をかき集めるんです。例えばツイッターでみんなが発信する意見をまとめていくと、小久保監督の言動や、人となり、周囲の状況などが集約されていき、輪郭を帯びてくるんです。そして小久保監督のあるあるが見つかる。
山本
小久保監督はネットでよく采配ミスが多いって言われているじゃないですか。でも不思議なことに勝ち続けていますよね。そのことも、あるあるに繋がるんですね。
RG
「采配ミスしがち、でも勝ちがち」と言えますかね。実際、小久保監督のあるあるについて僕はまだリサーチをしていないので、山本さんがおっしゃったものをあるある風に直しましたが、野球の評論家の方でしたらこの問いについて、正確な解答を言えるんじゃないでしょうか。勝ち続ける理由に「中田翔が助けがち」とおっしゃるかもしれません(笑)。
山本
僕らの土俵である「プロレスあるある」はパッと浮かびますか? 先日放送した「プロレス総選挙」や、ブームが再燃している「新日本プロレス」など話題に事欠かないですよ。
RG
そうですね、こういうのはどうでしょう。「プロレス関係のバラエティ番組には勝俣州和さん出がち」、あるいは最近の新日本プロレスだと「髪の毛茶色にしがち」なんてどうでしょうか(笑)。
山本
今のは痛快なあるあるだね(笑)。
RG
だからどんなお題に対しても、掘り下げていけば絶対にあるあるがあります。東スポの連載を通じて、「あるあるは全てのものに内在する」という結論に至りました。

万物はあるあるである

RG
あるあるというのはコミュニケーションのきっかけにもなるんですよ。初対面同士の会話って、まず両者の共通項、つまりお互いのあるあるを探すところからスタートしますよね。例えば天気の会話がいい例です。そのくらいあるあるというのは世の中に浸透しています。知り合い同士の「こんにちは」や「おはよう」といった当たり前の挨拶も、僕は進化系あるあるではないかと認識しています。「こんにちは」という1語の中には「今日は天気がいいですね」や「今日は過ごしやすい気温ですね」といった言葉がすでに折り込まれている。何気ない会話の端々を極限まで研ぎ澄ました果てに「こんにちは」だけが残った、と僕は考えているんです。
山本
「こんにちは」という5文字の中には、お互いの背景やシチュエーションがすでに盛り込まれていて、僕らは無意識のうちにあるあるを媒介させ、人と接しているということなんですね。それってすごく面白い発想じゃないですか!
RG
さらに付け加えると、人間が進化する以前、まだ言葉がなかった時代に発せられていたであろう「あー」あるいは「おー」といった擬声語、これもあるあるなんです。
山本
言葉同士でなくてもあるあるが成立するんですか?
RG
敵の襲来、食料の発見、といったコミュニケーションをとる方法が「あー」、「おー」で成り立っていた。言葉がなくても、合図を確立してお互いに認識していれば、結局は伝わりますよね。つまり「コミュニケーション=あるある」。同じ場所に何かが2つ以上存在したら、そこにはあるあるが自然発生します。
山本
人間以外にもあるあるがあるって言ったのはRGさんが初めてじゃないですか?
RG
他にも動物、虫、植物の中にもあります。例えば食虫植物が近づいてきた虫を捕食する動作。あるいは花がミツバチに花粉を運ばせる習性、これらは全て個々の生物が有している、「これをやらな、自分ら生きていかれへんで」というあるあるなんです。だからあるあるというのはまずは言語であり、そしてコミュニケーション手段・挨拶・遺伝にもつながり、さらには生き方・本能の中にまで含まれている、というのが僕の持論ですね。
山本
すごい! RGさんはまさにあるある博士ですね。今までさんざん苦労して捻り出してきたから、あるあるの原点、原型にまで辿り着くことができたんだ。
RG
東スポの連載をやっていた頃は、自分のツイッターでも、同じようにもらったお題をあるあるでリプライしていましたから。常に頭の中が一杯だったんですよ。そしてその時「全てのものにあるあるがある」と閃きました。だからどんなお題が来ても、逃げずに返そうと決心したんです。
山本
頭がパンパンになった結果、思考が覚醒して花開いたんだ。人間、追い詰められるって事はやっぱり重要なことなんだね。

パピプペポ川柳×あるある

RG
万物に存在するあるあるを見つけてきた中で、僕が思う一番美しいあるあるというのは、お題に対して一瞬で返せるフレーズなんです。さらにその言葉が5文字くらいにまとまっていれば、なおさらかっこ良いですね。
山本
瞬間言語、短縮言語っていうのは魅力的だよね。
RG
以前、お笑いコンビ・オードリーのラジオ番組に出演した時、「OLあるある」とお題を出されて、「羽織りがち」と即答しました。これが僕の最高傑作です。「は・お・り・が・ち」だから5文字ですし、何よりオードリーやラジオのリスナーからの反響が凄かった。
山本
RGさんの今の話って、実は僕が考案した「パピプペポ川柳」に繋がるんですよ。
RG
そうなんですか!?
山本
パピプペポ川柳は五・七・五の最後の5文字をパピプペポに統一して句を詠む遊びだから、必然的に使える文字は最初の五・七だけ。つまり12文字の川柳なんです。12文字で何かをメッセージを伝えようとしても、論理を組み立てる余地はないですよね。だから五・七は言い放し。言葉の論理性を放棄するから、瞬間的に言葉を選択する閃きも必要な要素になってきます。今はとにもかくにもせっかちな世の中なので、一から説明をし始めたらコミュニケーションが成り立たない。だからいかに早く、言葉を句点につなげるかがポイントになってくるんですよ。
RG
五・七・五のリズムに則れば「OLあるある 羽織りがち」は七・五ですよね。確かに、この語感とリズムでパッと返せると気持ちいいです。
山本
日本語の韻文というのは五・七、または七・五のリズム感で構成されているからそのRGさんの感覚は正しいよね。人と会話するときも文章を書くときにしても、僕は常々「一言で結論を伝えろ」と言っていたよ。映画の感想にしてもそうだし、本を読んでの感想も、全て一言で受け手に伝えることが一番重要なんだよね。
RG
僕が『週刊プロレス』を買うときも表紙を見て判断していました。山本さんが編集長だった時代は表紙のインパクトが特に強かったですよ。
山本
当時の『週プロ』の表紙コピーは、とにかく短くまとめていた。例えば「武道館炎上」とスパッと言い切って余計な説明をしない見出しはインパクトがあるし、生き様が浮き上がってきるからかっこ良いんだよね。
RG
あるあるも長いとかっこ悪くなります。今のお話を聞いて、ようやく山本さんが生み出したパピプペポ川柳と僕のあるあるが接点を見出しましたね。

共感・共犯・あるある

山本
例えば、五・七・五で自分の思いを伝えるということは、つまるところお互いの阿吽の呼吸の世界に突入していきます。五・七・五を用いた時点で、「細かいことを説明しなくても理解できるでしょ」の意味合いが盛り込まれる。阿吽の呼吸のコミュニケーション方法っていうのは、古来より日本人の美的感覚の中に脈々と流れて、現代に至ってもDNAの中にしっかり記憶されている。
RG
俳句、短歌、川柳も言ってしまえば、「理屈をこねずに、決められた語数でまとめなさい」という一種のコミュニケーション方法だということですね。日本人は昔から簡潔に伝えた先にある、共感を大事にしていたのかもしれない。あるあるにおいてもお互いに共感出来なければ、笑いは生まれないですから。
山本
お互いの共感っていうのは、ある意味では共犯関係でもあるんだよね。何が言いたいかというと、面白いあるあるの共感覚には、どこか皮肉めいたところや、からかいが不可欠なんです。ちょっと意固地な見方や思考がないと、優秀なあるあるにはならない。
RG
確かに。皮肉混じりのほうがお客さんもウケますね。やっぱり、どこか意地悪な目線が重要になってきます。「OLあるある 羽織りがち」も決して褒めてないですから(笑)。
山本
褒めたら言葉そのものがつまらなくなりますよ。腐す、貶すがあって、初めてみんながRGさんのネタに共感できるようになります。翻って、街に出て嫌な目にあったとか、ネガティブな状況に遭遇したという、被害者意識もあるあるに発展するでしょ。
RG
上から見下す視点もあれば、下から憎しみの視線を向ける場合があります。対等な関係だと綺麗事を言って、それだけでコミュニケーションが終わってしまう。そんな意識では共犯関係を有した面白いあるあるは生まれないです。

万物にあるあるが存在すると言い切ったRGさんは、言葉の力を引き出すためのDNAをターザン山本さんから受け継ぎ、短縮言語の魅力に気づくことによってパピプペポ川柳とあるあるの一致点を見出しました。次回「あるある考 後編」はあるある芸の誕生秘話などに迫ります。配信は4月14日(金)予定。乞うご期待!つづきを読む


■その他、『パピプペポ川柳傑作選 #0』刊行記念のターザン山本さん×サンキュータツオさん対談記事(2017年1月27日号掲載)はこちら


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【レイザーラモンRGさん関連情報】
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