言葉に疲れる日もあるけれど、やっぱり言葉に生かされたくて、今日も本をひらく|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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編集室から
2017年4月13日

言葉に疲れる日もあるけれど、やっぱり言葉に生かされたくて、今日も本をひらく

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栩木さんはテキストを正しく切り分けていく。ご自身は「解剖」と呼んだが、私には、いろいろな食材を重ねた美しい一皿を、それぞれの味のハーモニーを楽しみながらソースまで丹念に味わう気持のよい食事みたいに見えた。栩木さんの本には書きこみや貼りこみがいろいろしてあって(BOOKOFFにはたぶん買いとってもらえないけど)、私の『切腹考』よりも、幸せそうだった。こんなふうに本が読めるならなぁ…。

いっぽうの伊藤さんの読み方は、解剖せずに鴎外その人になってしまう読み方。私はまだ鴎外のいい読者ではないが、『切腹考』を通じて、伊藤さんを通じて、鴎外に身体が傾き始めている。『切腹考』は内容も面白いが、それに加えてリズムにひきこまれていく心地よさがあった。昔、何かを恐れていた時期に、般若心経を唱えていたことがあったが、それは宗教ではなく、言葉に包まれる安らぎだった気がする。『切腹考』にも、似た空気がある。なぜだろう。伊藤さんが言葉と向き合って遊んで疑ってもがいて、そんなふうにしてそこにある言葉だから? 言葉に疲れる日もあるけれど、やっぱり言葉に生かされたくて、今日も本をひらく。 (S)
2017年4月7日 新聞掲載(第3184号)
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