小学五年生 / 重松 清(文藝春秋)重松 清著『小学五年生』 帝京大学 金子 美由紀|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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【書評キャンパス】大学生がススメる本
2017年4月10日

重松 清著『小学五年生』
帝京大学 金子 美由紀

小学五年生
著 者:重松 清
出版社:文藝春秋
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小学五年生(重松 清)文藝春秋
小学五年生
重松 清
文藝春秋
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大人なようでまだまだ子ども。でも大人より“おとな”かもしれない。それが、小学五年生。

この本は全17編の短編からなる小説であり、主人公は全員小学五年生の少年。ここに収録されている「タオル」は教科書や試験の問題などで読んだことのある人もいるかもしれない。そんな17編ある物語の中で特に印象に残っている短編が「正」だ。

冬休みの最終日、主人公の少年は同じ団地に住む友人の紺野くんとゲームをしている。そんな中、少年は突然紺野くんに言う。《あんなの、ただの雑用係だもんな。》少年の言うあんなのとは学級委員のことだった。各学期で男女2名ずつが選出される学級委員、それはみんなの投票で決まる。立候補も再選もなし。クラスにいる男子のメンバーを考えれば今回は自分が選ばれることも…なくはない。もちろん学級委員なんて面倒だから選ばれたくはない。でも、選ばれたい。そして冬休みも終わり新学期。学級委員を決める投票が始まった。
《人気者になりたい――のとは、違う。勝ち負けというのとも、微妙に、違う。

ただ、どきどきする。むしゃくしゃする。胸の奥で小さな泡が湧いて、はじけて、また湧いて、はじけて……。》

この一節を読んだ時、少年の気持ちが手に取るようにわかった。それはきっと、自分も経験したことのあるものと同じだったからだろう。リーダーやクラスの代表なんて面倒だからやりたくないのはもちろんだ。仕事も多いし、先生に怒られたりすることもあるし。だけど、選ばれればかっこいい。クラスのみんなに認められたようだ。やりたい気持ちとやりたくない気持ちのせめぎ合い。無限ループである。小学五年生の私はこの気持ちの名前も知らなければ意味も理解できていなかった。なんだかもやもやするというか、これがいわゆるムジュンってやつなのだろうか、とか。

私がこの本を初めて読んだのは出版された年の2007年、当時中学1年生だった。5年生のときに同じクラスだった○○ちゃんは運動神経抜群だったなぁ。運動会のリレーで1位になってたし。○○くんは隣のクラスに好きな子が居るって言ってた。名前は教えてくれなかったけど。そんなことを思い出しながら少年たちと小学五年生だった自分とを重ねながら物語を読み進めていくと、なんだか卒業アルバムの文集を読んでいるような気持ちになった。大学生になり改めて読み直してみてもその気持ちは変わらなかった。また、単純に小学生時代を思い出して読むだけでもなくなった。大人になった証拠かもしれない。でも、それが具体的にどういうことなのか、難しい言葉を使ったりして上手く表現することはできない。まだまだ子どものままである。

小学五年生の自分が知らなかった“あの時の気持ち”の意味を、この本はさまざまな少年の生き方を通じて教えてくれた。あれが葛藤か。あれが挫折か。あれが恋か。ひとつひとつの気持ちを再発見していくことで本物の“おとな”になれるような気がする。


この記事の中でご紹介した本
小学五年生/文藝春秋
小学五年生
著 者:重松 清
出版社:文藝春秋
以下のオンライン書店でご購入できます
2017年4月7日 新聞掲載(第3184号)
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