平成29年度 吉川英治賞 贈呈式開催|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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受賞
2017年4月21日

平成29年度 吉川英治賞 贈呈式開催

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右から、藤田宜永氏、今野敏氏、本城雅人氏、宮内悠介氏、臼井二美男氏、中本忠子氏、ひとりおいて上芝雄史氏(藤井製桶所)
4月11日、東京都内で平成二十九年度吉川英治賞の贈呈式が開催された。
大雪物語(藤田 宜永)講談社
大雪物語
藤田 宜永
講談社
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賞の贈呈と各選考委員代表の挨拶ののち、各受賞者の挨拶で、吉川英治文学賞の藤田宜永氏(『大雪物語』講談社)は、「この賞は非公開で、僕が候補になったことなど知りませんでしたので、授賞の電話をいただいた時は、初めはびっくりして嬉しさはその後にこみ上げてきました。吉川英治文学賞はある程度キャリアを積んでいないと対象にならないと言っていいと思いますが、僕も僕も1986年の10月に小説デビューをして、この『大雪物語』が出たのが2016年の11月と、ちょうど30年目の本でこのような大きな賞をいただきました。過去を振り返るきっかけにもなり、30年目でとても素晴らしいご褒美をいただいた気になりました。僕は明日の4月12日が誕生日で67歳になり、晩年のとば口に立ったという気持ちでおりますが、これからどれだけやれるか分かりませんが、この賞からお前はもう少し書けと言われているような気がしています」と述べ、「この賞の第一回目の受賞者は松本清張さんで、松本さんは太宰治と同じ1909年、明治42年の生まれです。そこにもう一人私の父親も同じ年に生まれていて、さらには今日が父親の命日でもあります。これは何か縁があるなと思いました。そして今日は不思議なことに僕が住んでいる軽井沢では朝から雪が降りました。これはおそらく親父が降らせたのではないかと思っています。父も天国で息子の晴れ舞台を喜んで見ているのでしょう」と不思議に重なるいくつもの縁を語って挨拶とした。

吉川英治文庫賞の今野敏氏(「隠蔽捜査」シリーズ・新潮社)は、「非常にこの賞をいただいたことは嬉しくて、どれぐらい嬉しいかといいますと、今朝起きたら鼻血が出ました(笑)。鼻血が出た記憶は絶えて久しくなくて、それぐらい俺は嬉しいんだなとあらためて思いました。私などは若い頃からなぜか単発で書いた小説でもシリーズ化されてしまいます。そういう作家はなかなか評価されにくいのですが、そこに吉川英治さんの名を冠した文庫賞が出来ました。これは本当にありがたいことだと思っております。この賞はまだ二回目で世間の評価もまだまだ定まっていない感じがしますが、これはもらったお前たちがこれからこの文庫賞の名前を高めていくんだぞという意味合いがあるのだと思います。私も藤田さんと同様この先何年やれるか分かりませんが、さらに気を引き締めて書いていきたいと思います」と話した。

吉川英治文学新人賞の本城雅人氏(『ミッドナイト・ジャーナル』講談社)は、『この小説では記者の話を書いたのですが、記者はなぜ早く書くのかというところで結構悩みました。小説の中では早く書かないと権力によって不都合な真実が隠されてしまうからとしたのですが、もう一つ理由があって、早く書かないことには記者が努力をしなくなってしまうからなのだと思います。作家の世界もおそらく似たようなことがあると思っています。もしこの世から賞がなくなったら、作家は自己満足の世界でこれでいいやと思って、人に読んでもらおうという気持ちがなくなってしまう。その意味でも今回素晴らしい賞をいただいたので、賞に恥じないようこれからも頑張っていきたいと思います」と語った。
同じく新人賞の宮内悠介氏(『彼女がエスパーだったころ』講談社)は、「5年前に『盤上の夜』でデビューして、それがいきなり賞の候補になるという、新人としては恵まれすぎている破格の滑り出しとなりました。それから私なりに頑張ってきたつもりではありますが、そこにはこれまでに茨の道を歩んでこられた先輩方たちに対して、本当にこれでいいのだろうかという後ろめたさが常にありました。だからこそこの賞をいただいたことで、これからもっと書いていいんだよと言ってもらい、まさにスタートラインに立たせていただいたような気がして、本当に嬉しく思っております」と挨拶した。

吉川英治文化賞の臼井二美男氏(スポーツ義足の第一人者)、中本忠子氏(家庭環境に恵まれない子どもたちに食事と団欒の場を提供)、上芝雄史氏(藤井製桶所代表)の三名もそれぞれ壇上に立ち挨拶をした。
2017年4月21日 新聞掲載(第3186号)
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