【横尾 忠則】絵の極意は「無」、わが家のような寂庵、猫は正直|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」

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日常の向こう側ぼくの向こう側
2017年4月25日

絵の極意は「無」、わが家のような寂庵、猫は正直

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2017.4.10
 あえて「夢」とことわらなきゃ、そのまま現として通用する夢ばかりだ。最近は。昨夜の夢などはおでんと野良のホームレスが一枚の座布団の上で眠っている夢だ。「アアああ、また一匹増えたか、猫のために寿命を延ばさなきゃ」と夢の中で思ったりする。
光文社新書の小松現さんが朝日新聞の書評を集めた本のゲラを持参。題名は『本を読むのが苦手な僕はこんな本を読んできた』に決まった。七月刊行予定。

2017.4.11
 ホテルのロビーで数人の見送りの人達と電車の出発まで待機しているが、あと二分しかない。その前に迎えの車に乗って駅まで行かなきゃいけない。車に乗った時はすでに二分を切っている。そろそろパニック状態になりかける。これがもし夢ならこの辺で目が醒めて「あゝ、夢でよかった」ということになるのになあと夢の中で夢でありますようにと念じている夢を見る。実にコンセプチュアルな夢だ。
豊島横尾館が海外からの取材が多くなっているので、それに対応できる本をと、小学館の中川さんが本の企画プランを持って来訪。
月刊「ギャラリー」の〈私の10点〉についての取材。自作に優劣などつけられない。作品を決定するのは鑑賞者だよ。
夕食後の制作は三点目に入る。

2017.4.12
 「HANGA JUNGLE」とは国際版画美術館の個展タイトル。僕の版画はジャングルに密生する多様な植物と同様、多様な様式が特徴なので、作品を一堂に集めるとまるでジャングルの生態系と似ているところから、このタイトルにした。実際の作品にもジャングルやターザンを描いている。「版画」を「HANGA」にしたのは北斎の国際性にちなんで「HANGA」が国際言語になりつつあるからだ。
今年になってからの僕の愛読書は週刊誌が中心だ。テレビの音声が聴こえないので週刊誌から情報を得る。どの記事もこの記事も因果応報、自業自得で仏教不在。そこが今日的特徴でもある。

2017.4.13
 東大合格者の一人は親が高卒で子供に勉強しろと言わなかったので、それをいいことに子供は鉄道マニア、将棋、虫採りに熱中。そんな勉強そっちのけの子供が東大に合格。問題の答えは学びにあるのではなく遊びにあるという実話。

定期診断に虎の門病院へ。検査なし、問診のみ。私の場合=過食をしないこと、体重を現状維持、躰を動かすこと、旅行や外出はアクティビティが落ちないために行動的に、減塩維持、クヨクヨしないこと、以上。

2017.4.14
 新横浜発のぞみ10時9分発新神戸へ妻と徳永三人で。「ヨコオ・ワールド・ツアー」展の記者会見とオープニングに。平林恵によるキュレーション。海外旅行と海外展を交差させた作品と写真のドキュメント風。西脇から同級生10人ばかりと市長も。夜は蓑館長、浅田彰さんらとステーキハウスへ。

2017.4.15
 成田発のジャンボ機がテロにより180人の死者を出したという夢。
白隠だかが絵の極意は「無」だと言う夢。

寂庵にて、左から横尾泰江、瀬戸内寂聴さん
徳永明美、筆者
(撮影・本田佐奈恵)
午前中、もう一度ゆっくり展覧会を観て、京都の瀬戸内さんを訪ねる。足と心臓の手術に耐えた94歳の瀬戸内さんの肉体は驚異なり。着くなり現われたのはぜんざい、水瓜、寿司の椀飯振舞。他に饅頭と洋菓子はさすがパス。考えてみればしばらくご無沙汰の寂庵だけれど、わが家に戻った気分。桜が散っているかと思ったら雪。と同時に雷雨の大歓迎のおまけ。
夜帰宅。2日留守にしていたのでおでんは大喜び。ひとりはしゃいでいる。無口なおでんがよく鳴く。感覚と感情で生きている猫は正直。
三宅一生さんよりプリーツのスーツと照明器具を贈られる。

2017.4.16
 昼は山田洋次さんと増田屋。山本嘉次郎監督は部分的に黒澤さんに撮らせていたそーだ。「見ると如何にも黒澤さんって判りますが、僕は他人に撮らせることはできませんね」と山田さん。じゃ黒澤さんはどうだろう。とってもそんなことできる監督さんじゃないですよね。僕だったらどうだろう。やっぱり他人にはやらせられないだろうなあ。だって楽しみが他人に奪われるじゃないですか。

田村正和さんの家の前で奥さんにすごく久し振りに会う。会う度に別人だ。「今度、京都で主人が最後の『眠狂四郎』を演るんです」と嬉しそう。市川雷蔵のあと田村狂四郎は何本も撮っている。梅田コマ劇場でも井上昭演出で狂四郎を演ったことがあるが、その時僕は舞台美術を担当した。

野川の桜を撮りに行くが、散った後だった。

足もみの治療を受ける。悪くて痛いのか好転反応で痛いのか自分ではわからない。

おでんは昨夜の続きでまだ甘えている。

夕食後三点目の絵未完のまま完成。
以下のオンライン書店でご購入できます
2017年4月21日 新聞掲載(第3186号)
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