緒方貞子 戦争が終わらないこの世界で / 小山 靖史(NHK出版)小山靖史著『緒方貞子 戦争が終わらないこの世界で』 城西大学 植田 瑞美|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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【書評キャンパス】大学生がススメる本
2017年4月24日

小山靖史著『緒方貞子 戦争が終わらないこの世界で』
城西大学 植田 瑞美

緒方貞子 戦争が終わらないこの世界で
著 者:小山 靖史
出版社:NHK出版
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自分が何になりたいのか、どうすればなりたいものになれるのかがわからない時、本にヒントを求めることはないだろうか? 

大学卒業後、数年間事務職に就いていた私も自分の未熟さと漠然とした未来に不安を抱き、さまざまな本に助けを求めた。そんな時に出会ったのが長年に渡って国際社会で活躍されてきた緒方貞子氏を紹介した本書だ。

緒方氏の名を連ねる他書が、難民関連や国際社会での調和性のみに関するものが多いなか、本書では、彼女の生い立ち、学生時代、国連機関で働くまでの過程などについても書かれている。緒方氏が歩まれてきた道程をより身近な視点から捉えることによって、彼女の人となりや戦争に対する考えを深く読み解くことができる。

緒方氏は、東京都港区に生まれ、幼少期をアメリカと中国で過ごし、父と祖父は外交官、名付け親である曽祖父に至っては内閣総理大臣を務めた犬養毅氏という名家の出身だ。華やかな出自にうぬぼれることなく、海外生活、戦争体験、さまざまな人たちとの交流などを介して「自分自身をいっそう磨くため」の教育の大切さをいち早く悟られた。そして、その力を養い、駆使して活躍されてきた。教育こそ、関係者が彼女を「人種偏見がない」、「優しくて、強い」、「ロジカル」というように評する所以である。また、緒方氏が日本人として初めて難民高等弁務官事務所(UNHCR)長官を務めたこと、着任以来さまざまな問題を解決し十年間に渡ってその任務を全うされたこと、そして退官後も国際協力機構 (JICA)の理事長を務められたことなども、教育によって育まれた問題解決能力の高さを示している。

本書は、緒方氏を通して教育こそが人間形成の基盤であり、自分自身を育て視野を広げる一つの方法だということを教えてくれる。教育から得る柔軟な考えが、より素早く問題の本質を捉えそれに対応する解決策を見出すことができるからだ。なんとなくの学生生活を送って社会に出てしまった自分と、教育の大切さを早くに気づいた人を比較すると、その差に羞恥心を覚える一方だ。しかし同時に、第二の学生生活を得られた今こそ、高い意識を持って自らを育むようにと奮起させられる。また、新年度を迎え新たなステージに意気込む方々にも未来を見据えることを念頭に本書を手に取っていただければと切に願う。

以下のオンライン書店でご購入できます
2017年4月21日 新聞掲載(第3186号)
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緒方貞子 戦争が終わらないこの世界で/NHK出版
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著 者:小山 靖史
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