【横尾 忠則】少年時代の生活様式、そのままぼくの芸術様式。|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」

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日常の向こう側ぼくの向こう側
2017年5月2日

少年時代の生活様式、そのままぼくの芸術様式。

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2017.4.17
 『横尾忠則全版画』のサンプルが出きたと国書刊行会の清水さんが持ってきてくれる。約50年間に制作した230点の版画を掲載。版画に関するドキュメントでもある。僕は自分が版画家であるという認識は一度も持ったことがない。だから気分が乗れば作ってきたけれど制作期間もテーマもバラバラである。作らないとなれば10年間の空白があったりするが、丁度昨日、カナダで開催される国際版画展の出品オファーが来て、日本の10人の版画家のひとりとして選ばれていることを知った。

光文社新書の小松さんが書評集の最終ゲラを持参。古いものでは8年前の書評で今読むとすっかり読んだことも書いたことさえも忘れてしまっている。その忘れた時間はどこに行ったのだろう?

2017.4.18
 今月の14日以後でないと公表できないといわれていた個展は青森県の十和田現代美術館でありました。この美術館の館長の小池一子さんが何度目かの打合せに。街ぐるみで個展を盛り上げたいと以前作った魔除け猫のグッズをシールにして商店などのウインドーにベタベタと貼って街ぐるみお祭り的雰囲気にしたいとか。また猫がらみで描きためていたタマの絵が沢山あるので小部屋を利用して猫屋敷にするとか、色々とアイデアが続出。

「ドゥマゴ賞」という文学賞の審査員の依頼にびっくりする。現代小説など読まない僕にはとってもムリ無理。なんでも一人審査員だそーだ。勿論おことわり。

夕食後、4点目のタマの絵を描く。凄いスピードで描いた荒っぽい絵だけれど、そう悪くない。

2017.4.19
 早朝から昨夜の絵を仕上げる。

半年振りに東京医療センターの眼科の野田先生を訪ねる。長い間治療も薬も飲んでいないので眼底出血が進行しているかも知れないのでおっかなびっくり。ところが「驚くほどよくなっています。この半年の間に血液が機能していなかった細い血管に自然にうまい具合に流れてくれたみたいで、このまま血液が細い血管に流れてくれたら眼底出血は自然に治ります」。バランスの良い食事、睡眠を十分とる、ストレスをためない、そんなことが回復の理由だったらしい。目がよくなっているということは他の臓器などにもいい効果を上げているのかも知れない。

2017.4.20
 町田の「タウンニュース」で版画展の取材あり。

朝日新聞の書評担当が大上さんから加来さんに変って二回目の原稿を渡す。

明日、町田市立国際版画美術館のオープニングなのでピカ・ビアへシャンプーに。

夕食後、タマの絵にとりかかるがザッと描いたところで止める。
町田市立国際版画美術館での展覧会オープニングに最後まで残った友達会の面々
2017.4.21
 妻と美美三人で版画展のオープニングに。すでに沢山の人で広い会場はぎっしり。ゆっくり鑑賞するという感じではない。こんなに人が集まるのは美術館でも初めてとか。友人、知人全員に声を掛けることすらできない混み具合。山田洋次さん、李麗仙さん、大和悠河さん、小池一子さん、山口はるみさん、小中陽太郎さん、大野慶人さん、園山晴巳さんらまだまだ。声を掛けられても思い出せない人が多い。笑顔を作って返すしかなく、顔の筋肉がおかしくなった。

2017.4.22
 昨日は息切れするほど大勢の人にあったので今日は誰にも会わない日にする。

版画の個展作品はほんとに様式がバラバラ。僕の性格がそのまま反映しているのだろう。一般的に様式といえば美術的様式を想像するだろうと思うが、僕の様式は美術的様式ではなく、むしろ生活様式を重視する。それも特に少年時代の生活様式を。郷里での自然を相手に魚や虫を獲り、また自作の遊び道具で戯れ、ラベルやメンコや切手のコレクション、そして模写など、生活全域を様式にしたあの時と場所こそ生活必需品としての生活様式なり。大人になるに従って子供時代の生活様式はソフィストケイトされ、知性と教養に変化させてしまう。従ってソフィストケイトされない方が根源的な力を発揮する。つまり生き方を様式化してしまえば作品上でわざわざ様式を問題にする必要がない。僕の作品には固定した特定の様式がないのは子供時代の生活様式を大人になっても手離さずに持続させているからだ。人はそれを時には反知性と言う。芸術様式と生活様式を分けて考えれば芸術様式をわざわざ創造する必要がないことに気づいた。

夕食後、未完のタマの絵を彼女との生活様式を想い出しながら描く。
「横尾忠則 HANGA JUNGLE」展
以下のオンライン書店でご購入できます
2017年4月28日 新聞掲載(第3187号)
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