地域とともに歩む 大規模水田農業への挑戦 全国16の先進経営事例から / 八木 宏典(農文協プロダクション(発売:農山漁村文化協会))日本の水田農業のリアルを伝える|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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ここを伝えたい!本の編集者より
2017年5月1日

日本の水田農業のリアルを伝える

地域とともに歩む 大規模水田農業への挑戦 全国16の先進経営事例から
著 者:八木 宏典、諸岡 慶昇、長野間 宏、岩崎 和巳
編 集:大日本農会
出版社:農文協プロダクション(発売:農山漁村文化協会)
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日本の農業は構造改革されなくてはならない、といったような発言を耳にする機会がふえています。しかしそれでは現場はどうなっているのでしょうか。

日本の水田作経営の数は2005年の174万から2015年の115万へと、ここ10年ほどで大きく減少しています。その一方で、各地で大規模な経営が生まれつつあり、10ha以上の経営体数は2005年の1万6千から2015年の2万5千(約1.5倍)となっています。

大規模水田経営というと、大規模化した水田を大型機械で耕作する、生産には極力コストをかけず、販売にも力を入れる――そんなイメージをもつ人も多いでしょう。「表面上」はこのイメージはあたっていると思います。しかしそれだけではありません。

本書で取り上げられる全国16の先進事例を読むと、大規模水田経営といってもひとくくりにできないことがよくわかります。有機栽培だけでなく、加工米や酒米、飼料用米などに取り組む。転作の麦・大豆に力を入れる経営もあれば、野菜、果樹を導入する経営もある。農産物の加工販売や体験農園、さらには食育活動なども取り組まれている――といった具合に。

とともに、それぞれの地域が抱える自然条件や歴史的背景のなかで、土作りや独自の土地改良に腐心し、具体的な日々の作業に工夫を加え、新技術の導入や販路拡大等に果敢に挑戦する姿からは、地域の水田を守り、地域とともに自らの経営を発展させていこうとする、経営者たち共通の思いも読み取ることができます。彼らは優れた農業者、経営者であると同時に、郷土愛にあふれた地域人なのです。

オビにはこうした経営者たちの思いが列記されています。

・「『みんなの笑顔のために』というのが、横田農場の社訓・目標です」(茨城県:横田農場・横田修一氏)
・「条件が悪い圃場も積極的に引き受けさせていただくことで、耕作放棄地の発生を未然に防いできました」(岐阜県:福江営農・後藤昌宏氏)
・「次の担い手がここで農業をしたいというような地域を作っていきたい」(兵庫県:夢前夢工房・衣笠愛之氏)

本書は、こうした全国の先進16事例についてそれぞれ「経営」「生産技術」「土地基盤(農地およびそれに付随するインフラ)」の3つの視点から光を当てることで、経営総体をリアルに捉えたところに、そしてこれら個別事例の特色と意味を、研究者が日本農業全体の動向のなかに位置づけたところに特色があります。1冊の書籍のなかに、現場の視点と研究者の視点が共存し、かつ相互にリンクするものとなっているのです。

本書を読んでほしいのは、農業に直接関わっている人だけではありません。日々食べる米がどのように作られているのか関心のある人、近所の田んぼが最近どうも変わってきているようだと感じる人、農業を仕事にしたいなと考えている人などにもお薦めしたいと思います。とともに、「現場」と「研究者(学)」の間に立つような仕事をされている方にもぜひ読んでいただきたいです。農業関係者はもちろんのこと、各種コンサルや行政関係の方も得るところが多いのではないでしょうか。

この記事の中でご紹介した本
地域とともに歩む  大規模水田農業への挑戦  全国16の先進経営事例から/農文協プロダクション(発売:農山漁村文化協会)
地域とともに歩む 大規模水田農業への挑戦 全国16の先進経営事例から
著 者:八木 宏典、諸岡 慶昇、長野間 宏、岩崎 和巳
編 集:大日本農会
出版社:農文協プロダクション(発売:農山漁村文化協会)
以下のオンライン書店でご購入できます
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