目の前が開けるような感覚|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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編集室から
2017年5月11日

目の前が開けるような感覚

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久しぶりに、今福龍太さんの『クレオール主義』を読み返した。初めて読んだのは、確か、二十代の半ば頃、長い引きこもり生活の最中だったと記憶している。
何かパッと目の前が開けるような感覚をおぼえた。
これほどまでに自分の知らない世界があったのかと、貪るようにして最後まで一気に読んだ。痺れる一行は随所にあるが、たとえば次の文章はどうだろう。
「「プランテーション」という単語が、すべてのシェイクスピア劇のなかでただ一か所現われる場面がある」――「キャリバンからカリブ海へ」と題された章の冒頭である。ここから『テンペスト』の分析をはじめ、エメ・セゼール論へと繋いでいく。
この見事な語り。今回さらに驚いたのは、四半世紀前に書かれた書物でありながら、「古さ」を感じなかったことである。もちろん当時新鮮に見えた思想用語も、今ではごく普通に使われるようになった。しかし根底に流れているその精神は、瑞々しいまま目の前にある。
「今福龍太コレクション〈パルティータ〉」全5巻の刊行を英断された版元に敬意を表したい。 (A)
2017年5月5日 新聞掲載(第3188号)
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