第61回 岸田國士戯曲賞 受賞作は、上田誠氏 『来てけつかるべき新世界』 授賞式開催レポート|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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2017年5月5日

第61回 岸田國士戯曲賞 受賞作は、上田誠氏 『来てけつかるべき新世界』 授賞式開催レポート

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第六一回岸田國士戯曲賞(白水社主催)の授賞式及び受賞パーティーが、四月一七日、新宿区神楽坂の日本出版クラブ会館で開催された。受賞作は、上田誠氏の『来てけつかるべき新世界』(正賞・時計と副賞・賞金二〇万円)。本賞の選考委員は、岩松了、岡田利規、ケラリーノ・サンドロヴィッチ、野田秀樹、平田オリザ、宮沢章夫の六氏。
及川 直志氏
主催者からの挨拶で、白水社代表取締役社長の及川直志氏は、「初めてお目にかかったとき、上田誠という名前にぴったりの方だと思っていたが、戯曲を読ませていただいて「あれっ?」と、お名前とギャップがあるかなと(笑)。すべて言葉ありきでしかも関西弁ありきの作品という印象を受けた。脳をスキャンして数秒のうちにバックアップファイルが出来てしまうという世界で可笑しくてちょっと哀しい。関西弁で書くのは初めてということだがそれも意外で、ただコンピュータの言語と対抗するには関西弁でなければできないのではないかと。劇団名の「ヨーロッパ企画」だが、作品自体が宇宙に飛び立っていくような作品で、ギャラクシー企画というような名前にお変えになった方がいいんじゃないか(会場爆笑)。いま世の中的に心の筋肉がこわばって縮こまっているような気がする。三七歳という若さのパワーとテクニックで、そのこわばった筋肉をどうか解きほぐしていただきたい。ギャラクシーと言わず、アウタースペース目指して飛び立っていただきたい」と会場を沸かせた。

ケラリーノ・サンドロヴィッチ氏
選考委員を代表して、ケラリーノ・サンドロヴィッチ氏は、「ほとんど面識はなくて、お芝居も生で観たことがあるかどうか。ただ、『サマータイムマシン・ブルース』(二〇〇一年~)の頃から気にしていた、といっても観に行かない程度で完全にナメてかかってたワケで(笑)。去年もだったが今年も選考会に遅刻して参加になった。というのは自分がもらう方の授賞式があって、あげるよりはもらう方が嬉しいので。終わり次第駆けつけた次第で途中参加の僕が報告するのもおかしな話だが、僕が到着した時点で残っていたのは四作品(市原佐都子『毛美子不毛話』、林慎一郎『PORTAL』、平塚直隆『ここはカナダじゃない』と上田氏の作品)だったが、上田君の作品が圧倒的で上手いという評価で一致した。ただ唯一問題になったのは、上手いというだけで授賞として良いのか、そういう作品が果して岸田戯曲賞にそぐうのかどうかということに関しては、圧倒的なということでねじ伏せた感じがある。僕も笑いを中心にした芝居をずっと作ってきてて来年で二五周年になるが、この密度でこのクオリティの作品を書くことの辛さしんどさは、持って生まれた才能もあるだろうけれど、相当な努力の上に書き上げられた作品だと思う。主宰者は劇団員が喜んでくれることが一番嬉しい。(劇団員の)みなさん、二〇年近くやってきた上田君をお祝いしてあげてほしい」と祝辞を述べた。

上田 誠氏
受賞者の上田氏は、「まさかもらえると思っていなかった。授賞の連絡をロケで行っていた山の上の方の暗闇で受けて、喜びたかったが隣でロケをしているのでより暗いところに行って一人で喜びを噛みしめ、そのあと麓に降りて劇団のメンバーやみなさんに祝ってもらった。

ヨーロッパ企画という劇団で一九九八年からコメディを上演しているが、その最新作第三五回公演にあたるのが『来てけつかるべき新世界』という作品。関西弁の作品は初めてで大阪人情喜劇のようなことをやってみたいという憧れがあって、僕らがやるにはどうしたらいいかと考えたとき書店でドローンの本を見つけて、これだと思った。大阪のオッサンがドローンと闘っているという絵が浮かんで、タイトルも『ドローンと闘う大阪のオッサン』というタイトルにしようかなと思ったくらい。最終的には新世界という土地の力も借りて、自分が思ってもいないような壮大なコメディになって書きながらこんなとこまで来てしまったなと驚いていたのを覚えている。僕らは劇団で作品を作るということをすごく大事に考えていて、有機的な関係の中でより新しいところに進んでいく、そういう作り方が僕はすごく好きで、今回の作品もまさにそういう劇。僕一人で書いた作品では全然なくて役者やスタッフさんの考え、思いつき、創意工夫、事情とかいろんなことが含まれていて、台詞の中にも役者から出た言葉とか身体がこもっている。今回の作品では機械と人間の生身がいかに舞台上で絡むかそこを企画の大事なところにしたいと考えて、技術や予算との戦いの中でやっていった。ドローンが焦点になっていて客席に落ちたら大変なことになるとかプログラミングが難しいとか、自由飛行をやめようかと言ってるときに演出部の杉浦君がある日、ドローンの操縦が劇的に上手くなっていて、驚くべきソリューションでドローンのシーンが実現した(笑)。

今回の受賞はこのまま、この道にいてやっていっていいんだよと言われているようで嬉しさもひとしお。コメディはまだまだいろんなことができる、これからも未踏のコメディを開拓していけたらと思う」と、会場を笑いの渦に巻き込みながら受賞の喜びと意欲を語った。
宮沢 章夫氏
今年度の最終候補作は受賞作に加え、市原佐都子『毛美子不毛話』、長田育恵『SOETSU 韓くにの白き太陽』、オノマリコ『THE GAME OF POLYAMORY LIFE』、瀬戸山美咲『埒もなく汚れなく』、林慎一郎『PORTAL』、平塚直隆『ここはカナダじゃない』、山縣太一『ドッグマンノーライフ』の八作品が選出されていた。

2017年5月5日 新聞掲載(第3188号)
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