女による女のためのR―18文学賞 贈呈式 第16回|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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2017年5月5日

女による女のためのR―18文学賞 贈呈式 第16回

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左から三浦氏、辻村氏、白尾氏、伊藤氏、友近氏
四月二十六日、東京・新宿の京王プラザホテルで、第十六回女による女のためのR-18文学賞の贈呈式が開催された。五七三通の応募の中から、白尾悠(はるか)「アクロス・ザ・ユニバース」が、大賞、読者賞のダブル受賞、伊藤万記「月と林檎」が友近賞と決まった。

白尾氏は、一作年は三次選考、昨年は最終選考まで残り、今年は二作応募。社内選考会では、二作のうちどちらを最終選考に残すか、議論となったという。また伊藤氏は昨年、ゆきのまち幻想文学賞の他、夜釣十六(よづりじゅうろく)名で太宰治賞を受賞している。
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 選考委員の三浦しをん氏は「今回の選考会では罵倒は飛び交わず、辻村さんも私も無傷のまま、めでたく受賞作を選ぶことができました(笑)。「アクロス・ザ・ユニバース」は、ホラー映画が好きな女子高生と、男の子とチャラチャラ遊んでいるらしい女子高生、同じ学校の二人が、ふとしたことから東京へ同道することになる、という話です。学校では話したことがなかった二人が、その一日の旅の中で、距離が近づいていく。その過程で、二人が抱えている辛さや悩みも徐々に読者に明らかになっていきます。
笑いもたくさんあって、ホラー映画をはじめ、創作物全般に対する愛が溢れていて、青春物としても素晴らしいし、創作物から力をもらった人が、いかに周りの人を支え助けることができるのか、ということが、誠実に描かれていたと思います。本当に心を打たれ、主人公の女の子たちを応援せずにはいられませんでした。

「月と林檎」は、美術教師と女子高生の間に恋が生まれるのだろう、こういう話は今までごまんと読んだ、私に言わせれば、生徒に手を出す教師なんざ、トンだ変態野郎だ、と思ったのですが、この作品はそうはならず、先生の変態ぶりがこちらの予想を上回っていました。
でも同時に、非常にシリアスです。先生も女子高生も大きな喪失を抱えている。何かを失ったことのある人が、簡単に言葉にならない関係の上で、どのように、そっと人を救えるのか。そういう話になっていて、こんなに変態なのに、よくこんなに素敵な話になるな、と(笑)。その読み心地もスリリングで、面白かったです。

二人とも誠実かつ真摯に、小説に向かい合い、弱い人たちの心に寄り添って、素晴らしい作品をたくさん書いていく方たちだと思っています」

辻村深月氏は「賞の選考で、押したいと思える作品に巡り合えるとき、ものすごい幸せを感じます。今回は、「アクロス・ザ・ユニバース」を読んだときに、圧倒的にその思いを持ちました。これを押そう、意見が割れたらしをんさんを殴ろう、と臨んだところ(笑)、しをんさんも大絶賛で、非常に盛り上りました。毎年楽しいですが、今までで一番と言っていいぐらい、楽しい選考会となりました。
選評に「行きて帰りし物語」と書きましたが、これは『指輪物語』の前段の『ホビットの冒険』を指すタイトルです。ファンタジー以外も、全ての物語の構造はどこかで、「行きて帰りし物語」であることが多いと思っています。どこかに行って冒険して帰ってくる、だから「行きて」なのですが、私の中では「生きて」でもあります。
 「アクロス・ザ・ユニバース」も、日帰りの冒険の中で、主人公たちが生き生きと、生きているんですね。日常の中にふと現われた非日常、その冒険を終えたときに、何かをしっかりとつかみ取って帰ってくる。そういう物語を得たいから、私たちは小説を読むのではないか。最近読んだものの中で、一番の「生きて帰りし物語」でした。

「月と林檎」は、胸をときめかせながら読みました。文章がとても繊細です。主人公は突然の怪我で、今までの居場所を奪われてしまいます。その沼地のような場所をどのように描くのか、そこで手を差しのべる塔田先生とは、どういう人物なのか。惹きつけられました。

友近賞が「月と林檎」であると知り、またしをんさんから「魅力的な変態」との賛辞が飛び出し、変態に対して一過言も二過言もありそうな二人に祝福されるような変態を、一度でいいから自分も描いてみたと、同業者としてかすかな嫉妬すら覚える作品でした(笑)。
白尾さんは三度目の投稿。昨年の作品も印象に残っています。昨年はいつも以上の激戦で、候補者全員にデビューしてもらって大丈夫というほど、粒ぞろいの選考会だったんです。同じときに候補だった佐々木愛さんが、第九十六回オール読物新人賞を受賞してデビューしたと聞きました。うれしいと同時に、盗られたみたいな気持ちもあるんですよね。白尾さんのことも心に残っていて、受賞には至らなかったけれど、また書いてほしい、と思っていました。今回二作応募してくださったときいたときには、選考委員として感謝したい気持ちになりました」

友近氏は「本を読むとき、映像化するとどうなるだろう、と考えるのですが、候補作の中で「月と林檎」が一番、細かい描写や情景が頭に入ってきました。ドラマでも『高校教師』とか『ヤヌスの鏡』がすごく好きだったので、教師と生徒の間に、エロティックな何かが起こるのではないか、と思わせる設定にひきこまれていったのですが、最後まで読んで、そういう作品にならなくてよかった、と思いました。かといって全く乾いた作品でもなく、緊張感の中にエロスが常に表現されていました。
先生と生徒の傷の深さや種類は違いますが、これから二人がどう前向きに生きていくのか、そういうことも考えさせられました。また背景に、先生の姉の人生も絡んでくる。
皆まで言わず、エロに辿りつかず、その寸前で想像を掻き立ててくれる作品だったのではにないか、と思います」と話した。

授賞作と選評、受賞者の言葉は、「小説新潮」五月号に掲載されている。
2017年5月5日 新聞掲載(第3188号)
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