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漢字点心
2017年5月9日

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五月五日に飾る「かぶと」は、漢字では「甲」と書くのだと、子どものころから思い込んでいた。しかし、実際には、「兜」を用いる方が、漢字としては厳密だ。なぜなら、「甲」は、本来は体を覆う「よろい」を指す漢字で、頭にかぶる「かぶと」を表すのは、誤解から生じた日本語独特の用法だからである。そういわれれば、カメの「甲羅」だって、体全体を覆っている。

ただ、ぼくの思い込みにも、理由がないわけではない。ぼくが生まれ育った兵庫県の西宮市には、「甲山(かぶとやま)」というシンボル的な小さな山がある。おわんを伏せたような形にこんもりと盛り上がっていて、なるほど、「かぶと」を思わせる。その山容を毎日見上げながら大きくなったのだ。「かぶと」は「甲」と書くものなのだ、と思い込んだとしても、不思議はあるまい。

われわれの漢字に対する感覚は、知らず知らずのうちに、生まれ育った環境に大きな影響を受けているものなのである。
2017年5月5日 新聞掲載(第3188号)
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