森本平『ハードラック』(2004) 口答えばかりしやがるあのコムスメ今度宿直室で犯そう|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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現代短歌むしめがね
2017年5月9日

口答えばかりしやがるあのコムスメ今度宿直室で犯そう
森本平『ハードラック』(2004)

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この歌が収められている歌集は、かなり実験的な構成となっている。各章ごとに舞台となっている年代が「二〇〇三年」「一九八一年」「一九九一年」と変わり、さらに時系列も順番通りになっていない。そして連作ごとに異なる主人公が据えられているという、オムニバス形式になっている。たとえば「一九八一年」の章では、act1に「主人公が歌う」、act2に「主人公の担任が歌う」、act3に「主人公の友人が歌う」と書き分けられている。特にact3は、本来ひらがな表記される単語はカタカナで、カタカナ表記される単語はひらがなで書かれており、「主人公の友人」の狂気を、極端に読みづらい文体で表現している。

そして掲出歌は、act2の「主人公の担任」の歌である。普通の教師の仮面をかぶりながらその内側に暴力性を宿し、女子生徒をたびたび強姦していることが短歌で語られる。この歌集の中の世界はなぜか短歌がポピュラーなものであるらしく、それぞれの登場人物がそれぞれの短歌を作っている設定なのだ。短歌で出来る表現の可能性を拡張しようとする意図の末にたどり着いた方法論である。こうすることによって現実にはなかなかいない(しかしどこかにいるかもしれない)、裏の顔が強姦魔の教師というキャラクターを創出し、その目から見える新しい世界を追体験できるようになった。そしてその表現法が短歌だからこそ、強烈に頭に刻みつけられるリズミカルな言葉が読者へと襲いかかってくるのである。
2017年5月5日 新聞掲載(第3188号)
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