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漢字点心
2017年5月16日

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隋(ずい)王朝の亡国の皇帝、煬帝(ようだい)は、父の文帝を暗殺して位を奪ったといわれている。そして、父の詔勅だといつわって、弟の漢王を都へと呼び寄せた。もちろん、これまた暗殺して己の地位を安泰にしようというのである。

ところが、父、文帝は生前、漢王にこっそりこう告げていた。「私がお前を呼び寄せるときには、詔勅の勅の字のわきに、点を一つ打っておくことにする。点がない場合は、ニセモノだと思え」と。そのため、漢王は、兄の陰謀をすぐさま見破ることができたという。

よくできた作り話としか思えないが、『資治通鑑(しじつがん)』という立派な歴史書にも載っているから、少なくともありえる話ではあるのだろう。いかに危急存亡の際とはいえ、詔勅にわざわざウソ字を書くなんていかがなものか? ほかにやりようもあるだろうに…、と思うのは現代人の感覚。当時の人々は漢字に対して、もっと融通が利く見方をしていたのに違いない。
2017年5月12日 新聞掲載(第3189号)
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