【横尾 忠則】GWの夢中夢。 軽佻浮薄はいずこ・・・|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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日常の向こう側ぼくの向こう側
2017年5月16日

GWの夢中夢。 軽佻浮薄はいずこ・・・

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パークハイアット東京にてカルロス・サンタナさんと
2017.4.28
 元スマップのような人気グループに僕は所属している。他のメンバーには保坂和志、磯﨑憲一郎さんもいる。ボーカルはメンバーの中でも特別ブチャムクレな顔をした奴だ。こんな夢を見て5時過ぎに覚醒。そのまま絵を描く。

頭がすっきりしないのでヤッサンの美容院へ。

新宿のパークハイアットホテルで明日帰国するカルロス・サンタナに会う。妻同伴。いつもと違ってカルロスはいきなりカタイ音楽論をぶっつけてくる。雑誌の対談だと勘違いしているんじゃないかな? 初めて見たルーブルのモナ・リザに感動して女性礼讃の音楽をお互いに時間たっぷり話合ってコラボをしたいと言う。

帰路小澤征爾さんと道でバッタリ。しばらく立話をする。

夕方山田さんと二子玉川109シネマズへ「ラ・ラ・ランド」を観に行く。模倣と独創、未完と完成、未熟と円熟。映画監督でもないのに僕ならこうするのにと批評しながら観る。

2017.4.29
 ベッドの中で朝日の書評を。
「図書」が岩波文庫の「私の三冊」を特集。僕も回答しているが何人かの知人の推薦本には特に興味あり。

2017.4.30
 成城の不動産屋でエド・はるみ似の店員から第二のアトリエ物件を示される。「以前、夢で見た林の中の物件はないですかね?」と尋ねると「あれは出ました」。どうして僕の夢の中の物件のことをエド・はるみは知っているんだろう。このような夢を夢中夢という。

町田の国際版画美術館で「文藝」の連載〈アトリエ会議〉のライブ版を行う。保坂、磯﨑さんとの鼎談。どうもいつもの軽佻浮薄な感じがでない。不真面目な話が真面目になって、これは失敗だった。でも三人のサイン本(『アトリエ会議』河出書房新社)がよう売れました。

2017.5.1
 南天子画廊でも新作版画展をすることになって、青木さん来訪。

夕方、補聴器が出きたので成城補聴器へ。紙がガサッという音まで大音響に聴こえるのにはびっくり。まるで映画館の音響だ。今日から日常が映画館に変わるぞ。

2017.5.2
 TBSの伊集院光さんのラジオ番組に出演。以前出てから11年も経つそーだ。それにしても伊集院さんは昔の話の内容を適確に記憶しておられる。才能だろうなあ。

夕方、昨日に続いて朝日の書評二本目入稿する。加来さん驚く。そんな顔を見たいために三本目も入稿しちゃおうかな。

2017.5.3
 午後足もみ治療。夕方まで絵の制作。筆を持たないと白痴状態で何も浮かばないが、筆を持った瞬間、ドドドとアイデアが湧き出す。

2017.5.4
 急に町田の版画美術館のカレーとぜんざいが食べたくなって町田へ。電車に乗ることが滅多にないので切符を買うのに一苦労。やっと乗ったら両隣、茶髪にマスクの女の子にはさまれ、ひとりは僕の肩に頭を乗せたまま熟睡。前の座席の若いカップルは僕が嬉しがっているとでも思っているのか時々笑う。

GW真只中で美術館の切符売場に行列ができる。滝沢さんに薬膳カレーのご馳走。日経新聞出版社の苅山夫妻に会い、四人でぜんざい。結局展覧会は見ないまま。目的はカレーとぜんざいだからこれでよし。苅山夫妻のナビで無事成城学園駅まで帰れた。まだ安心できないと思ったのか苅山夫妻はわが家の途中まで送ってくれる。本格的な老人になった気分を味わう。

夕食後の絵を中止してDVD「鏡の国のアリス」を観る。「過去は変えられないが未来は変えられる」とかなんとか言ってタイムマシーンで時間の壁を越えるシーンは、まるで死後の世界のシミュレーションだ。

2017.5.5
 朝食前にタマの絵を描く。いつの間にか六点が完成。環境が変わると絵のスタイルも変わる。努力しないで変わるので言うことなし。

「よう! よく会うね、磯﨑さん」。また道でばったり。彼は毎日同じコースを散歩しているという、彼の散歩コースを自転車でつき合う。おかしいくらいに真剣に歩いている。血圧を下げる努力らしい。

午後、野川に面したテラスで初夏のような陽光の下で『文豪てのひら怪談』(東雅夫編)を読みながら冷気どころか熱気に汗ばむ。この本には僕の怪談咄も載っているので「文豪」の仲間入り(笑)は笑っちゃいます。

2017.5.6
 GWで出掛けたのは町田までカレーとぜんざいを食べに行ったくらい。

何もないデレーッとした一日はつまらないけれど、子供の頃、今頃は水田に流れ込んだ小鮒を追っかけたっけとあの日、あの頃のたわいない幻想で遊んでいるうちに、急に絵のアイデアが浮かんで、よっしゃと立ち上った。

2017.5.7
 今日はGWの最終日。

山田さんとそば(僕はうどん)を食べる。こんど前進座で「駱駝の馬さん」を演出されるそーだが、劇中、死体を運ぶ駕籠かきのセリフに、この間キケロの「老年について」で書いた僕の言葉を引用されたいと。どんな言葉だったか忘れてしまったが、お役に立つのは嬉しいことです。
2017年5月12日 新聞掲載(第3189号)
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