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Forget-me-not
2017年5月23日

Forget-me-not⑳

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夕暮れ時にウガンダの首都・カンパラ郊外の公園で過ごすバイクタクシー運転手。夜の公園はゲイ達の出会いの場としても知られている。 ⒸKeiji fujimoto
「久しぶりだね」その男は笑顔を浮かべ、右手を僕に差し出した。君のことは知っているよ、とその態度に現れている。

見覚えはあったが、どこで会ったのかはすぐに思いだせなかった。背は低めで髪はドレッド。大きな茶色の瞳で、左頬にホクロがある。

「すぐに君だとわかったよ。でもまさかこんな場所で会うなんて思いもしなかったな」

徐々に記憶がはっきりとしてきた。たしかどこかで会った時も、こういう笑顔で僕を見上げていた気がする。そうだ。カンパラで滞在している安宿の近くによくいるバイクタクシーの運転手だったのだ。

「よかったら少し話さない?」

僕にはわかっていた。日暮れ時に郊外の公園に一人でやって来るのはゲイくらいだ。男に促されベンチに腰をかけると、あたりはいつの間にか真っ暗になっていた。

男は微笑んだままこちらを見ている。こうなっていることを恥じている風は全くない。それも当たり前だ。僕たちの周りには誰一人いないのだから。

「時間はたっぷりあるから」と話した直後、突然背後から家族連れの無邪気な笑い声が聞こえてきた。急に我に返ったらしい男はドライバー口調に戻りこう続ける。

「今から街まで送っていこう。夜に外国人が一人でこんな場所にいるなんて、強盗に襲われるかもしれないから気をつけた方がいい」

(ふじもと・けいじ=写真家)
2017年5月19日 新聞掲載(第3190号)
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