【横尾 忠則】前代未聞、迫力のファントマ☆ 踊って歌う生けるバービー人形♡ 大和悠河さん、ドーゾ!|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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日常の向こう側ぼくの内側
2017年5月23日

前代未聞、迫力のファントマ☆ 踊って歌う生けるバービー人形♡ 大和悠河さん、ドーゾ!

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2017.5.8
 夕方事務所に寄るとパソコがドアのスキ間から庭に出たらしい。ツートンが部屋にいるのでドアを開けっ放しじゃ二匹共いなくなる。と考えるとやっぱりドアを閉めるしかない。このまゝ一晩中パソコは外だ。行方不明になるか、明日戻ってくるか、まさか事務所で寝泊りするわけにはいかない。こーいう時は猫博士の保坂和志さんなら、「探しに行くか、事務所に泊るべし」と言うに決まっている。メス猫は行動のテリトリィが小さいのと帰巣本能を信じるしかない。

カルロス・サンタナから新作のCDとDVD届く。「まだ内緒に!」と口止めされている。

町田の版画展をNHKの「日曜美術館アートシーン」で取り上げてくれるのはいいけれど、チンケな質問に困り果てる。見かねた別のスタッフが編集に助力。

2017.5.9
 十和田市現代美術館の個展タイトルが「横尾忠則十和田ロマン展 POPITALL」に決定。カタログのエッセイに売れっ子の若い小説家名が候補に挙がっているが、名だけ先行するのはどうかと思う。

2017.5.10
 夕べはパソコを心配して不眠気味。中に入りたくて一晩中外でニャーニャー鳴いたせいか声が枯れている。やっぱり家の中がいいんだ。

夕方、朝日の書評委員会へ。僕に書かせようとする本があるので、「ガンバッテ、取ってちょーだい」とエールを送られて、誰ともバッティングしないで取れました。ここ一、二年あまり書かなかったので「今年は書いて下さい」と言われている。だけど遅読の僕はかなりつらいのです。それとまとめるのがどうも下手で。

2017.5.11
 昨日朝日に行く途中タクシーの中でユンケルを飲んだのが眠る頃に効力を発揮して朝まで覚醒状態。朝までダンテの煉獄状態が続きました。

フランシス・コッポラの息子のロマン・コッポラは今や優秀な映画監督。そのコッポラからモーツァルトをテーマにしたテレビドラマを制作、劇中に登場するモーツァルトのオリジナルジャケットとポスターの依頼を受ける。架空のジャケットとポスターは面白いじゃないの。近い内に打合せにくるみたい。

目下、フランスとイタリアの仕事もきている。それにアメリカが加わるとこの秋はにぎやかになりそう。

2017.5.12
 夕方から急遽始まった南天子画廊の版画とグッズ展のオープニング。青木社長は「一度日銭商売がしたかったんですよ」とお遊び展を企画、作品と違ってグッズ商売はレジがパンクしそうで嬉しい悲鳴。例によって例の古い顔、新しい顔に「誰だっけ」、と思い出せないままヘコヘコ、ニコニコ挨拶して廻るので顔の筋肉疲れました。

終ってから南天子の近くの中華料理店で青木さん主催の酒井忠康さん、滝沢恭司さん、安来正博さんと、わが家族も含めて、古い話、新しい話をする。

帰宅すると11時過ぎていた。「帰ってきたの!」とおでんひとりはしゃぎ廻る。

2017.5.13
 死んだタマと森の中で遭遇。「おいで!」と抱き寄せようとするとサルに変身。そのサルが僕にはむかって来る。「ヨッシャ」と思ってチンパンジーになってみせる。驚いたサルは急にゴリラになって襲いかかる。「負けるものか」とキングコングになってみせてやる。さすがキングコングにはかなわないと元のタマに戻る。僕もキングコングから人間に戻ってタマを抱いて森の中を歩く。他の動物に変身した夢を見るのは初めてだ。でもこんな様子をもうひとりの僕が上から俯瞰して見ている。

朝から雨。天気ならつい自転車で移動してしまうが雨の日は歩き。だから躰のためには雨は大歓迎。雨を理由にしてでも歩かなきゃ、足から歳を取るという。

夕方から久し振りに大きい絵、100号にとりかかる。十和田展に合わせて十和田のY字路と十和田の馬の絵を描く。

深夜0時になっても眠れず、明日のトークにさしさわるが、ボケ状態のトークもよしとしよう。
町田市立国際版画美術館にて大和悠河さんと(撮影・徳永明美)

2017.5.14
 不眠のまま町田の版画展のトークへ。妻、徳永同行。

こんなトークは前代未聞。勿論美術館だって開館以来の珍事。学芸員の滝沢さんまで乗りまくって、ショーの司会者に変身。「では、ヤマト・ユーガさん!ドーゾ」なんて大音響の音楽「ELOISE」より「宝石の瞬間」を歌いながら入場するその演出に、そこには「学芸員」の滝沢さんはいない。大和悠河の迫力の渦巻きオーラに会場から黄色い悲鳴が飛び跳ねる。長い黒と赤のマントにマスク、ステッキを振り廻しながらファントマに変装して、臨時仮設銀橋で思いっ切り大ミエを切る元タカラジェンヌ(宙組)のトップ大和悠河が会場を揺るがし、陶酔の渦にしてしまう。そんな虚構のヒトとの対談、想像してみて下さい。大抵頭オカシクなりまっせ。続いてお色直しでグラマラスに再登場。展覧会名「HANGAJUNGLE」に合わせてサファリルックに真暗な会場を懐中電燈をあやつりながら、ゴリラやターザンの絵(いつの間に会場に展示してたのか知らなかった)に怪光を当てながら、サファリコートを脱ぐと生きたバービー人形に変身。こんな状況の中で銀橋を何度もエスコートされて、さあ冷静にトークして下さいなんていわれてできるものではないけれど、やるしかない。まるでバーチャルの世界。しんどかった! こーいう妖精のような娘がアトリエで歌って踊ってくれれば、それだけで作品に活気が宿るだろうに。

ガタッと疲れて良く眠りました。(よこお・ただのり=美術家)

2017年5月19日 新聞掲載(第3190号)
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