連 載 映画/映画作家/映画批評  ジャン・ドゥーシェ氏に聞く(9)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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ジャン・ドゥーシェ氏に聞く「映画/映画作家/映画批評」
2017年6月6日

連 載 映画/映画作家/映画批評 
ジャン・ドゥーシェ氏に聞く(9)

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左から、ドゥーシェ、ロメール、ベアトリス・ロマン

JD
 ロメールがリベットに『カイエ』から締め出された、その事件は私のせいです。背景にはヌーヴェルヴァーグの成功があります。ゴダール、トリュフォー、シャブロルの映画は皆成功しました。その一方で、ロメールとリヴェットの映画は決して成功したとは言えませんでした。だから彼らには仕事がなかったのです。ロメールはカイエに戻ってきて編集長の仕事に就きました。こうすることで、少しばかりの収入を得ながら次の作品について構想を巡らすことができたのです。しかしリヴェットはすることがありません。その時に私がパリに戻ってきて、『カイエ』の中で重要な役割を果たしたのです。映画批評の次の世代を探すためにシネクラブを巡り、ダネーやナルボニといった多くの若い世代を『カイエ』の中に入れました。リヴェットはそのことに対して非常に嫉妬していたのです。『カイエ』はもうリヴェットのものではなく、ドゥーシェの『カイエ』になってしまったという感じです。そのことが彼にとって全く好ましいことではなかったのです。それが理由でリヴェットは陰謀を企てていたのです。トリュフォーも唆され、ゴダールも少しだけ協力させられていたはずです。63年から64年にかけての『カイエ』は、決して経済的には成功していたとは言えません。そういうこともあって、最初にロメールに反対する陰謀に成功し、続くようにして私に対するものも成功したのです。

その事件から15年ほど後に、ロメールが私に対して「ドゥーシェ、お前のせいで私が『カイエ』から追い出されたのを知っているか」と言ったことを覚えています。「もちろん、知っている」と返答しました。どちらにせよこのような陰謀の結果、リヴェットは『カイエ』の支配権を得ました。編集長としての直接的な支配権ではなく、監修と言った方が正確です。こうした経緯があって、ナルボニやダネーの世代によるリヴェットの『カイエ』が始まったのです。『カイエ』以降のナルボニやコモリ、トゥビアナによる『カイエ』と言ってもよいです。

実のところ、本当の『カイエ』とは1960年まで、もしくは創刊の時期だけだったと言えます。その後の『カイエ』は、別のものになってしまった。ダネーや他の批評家がいたので決して悪いものではありません。しかしトゥビアナが書き始めた70年代からは、面白いものではなくなっています。
HK
 ドゥーシェさんは一貫して映画の専門家として権威の側にいるよりも、愛好家として普通の観客の側にいることを続けています。そしてその中心となるのがシネクラブですが、どうしてシネクラブを続けているのでしょうか。シネクラブとは何なのでしょうか。
JD
 何にも増して、私がシネクラブが好きだということが動機となっています。根本的なところでは映画の持つ魅力を伝えることを楽しんでいるのかもしれません。世代を超え国境を超え、異なる背景を持つ観客たちが私の解釈を楽しみ、積極的に議論に参加することには驚かされています。

シネクラブとは、その歴史の始まりにおいては、映画好きな人々を対象としていました。しかし実は多くのシネクラブは、映画が好きな人々を対象としていなかったのです。非常にスノッブなものばかりでした。人々は偉大な映画を観に行くことで満足していたのです。一般的には、そのような作品は非常に粗悪なものばかりです。作品の中に高尚とされるテーマを見つけることで十分だったのです。私たちは、もう40年代の後半のようにして語ることはできません。フランスの映画作家と言えば、ルネ・クレールだったのですが、最悪とまでは言いませんが、まったくもってひどいものでした。彼には何か言うべきことがあったのでしょうか。何もなかったはずです。彼はただ軽率に映画を作り、最悪なまでにフランスっぽい映画をやってみせただけです。わざわざフランスっぽい映画を作ることに意味はありません。私たちはすでにフランス人ですからね(笑)。 <次号へつづく>
〔聞き手=久保宏樹/写真提供:シネマテーク・ブルゴーニュ〕
2017年6月2日 新聞掲載(第3192号)
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