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漢字点心
2017年6月13日

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音読みでは、ふつうは「トウ」と読む漢字。訓読みでは「おろか」と読む。

紀元前二世紀、前漢王朝の時代。汲黯(きゅうあん)という官僚は、剛直無類。けっして筋を曲げようとはしないから、領内はよく治まるが、ほかの官僚たちからは煙たがられる。大臣に対してもぶっきらぼうな挨拶しかしないし、皇帝に向かっても言いたいことをズバズバ言う。さすがの皇帝も、「ひどいな、汲黯が『戇』なのは!」と漏らしたという。

このように、「戇」が表す「おろかさ」とは、単に頭が悪いことではない。自分が正しいと思うことを一途に守るがために、世渡りがうまくできないことを指すのだ。そこで、この漢字の意味を「馬鹿正直」だと説明している漢和辞典もある。

そうだと知ると、二八画もあるこの複雑な形そのものが、「馬鹿正直」さを象徴しているような気もする。もっと楽なやり方もあるだろうに……と思いつつ、紙に書いてみたことだった。(えんまんじ・じろう=編集者・ライター)
2017年6月9日 新聞掲載(第3193号)
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