現代に生きるフィヒテ フィヒテ実践哲学研究 / 高田 純(行路社)三十年間の研究の成果  テクスト内在的にフィヒテの思考の構造を問う|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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読書人紙面掲載 書評
2017年6月19日

三十年間の研究の成果 
テクスト内在的にフィヒテの思考の構造を問う

現代に生きるフィヒテ フィヒテ実践哲学研究
著 者:高田 純
出版社:行路社
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本書は、この三十年の間に著者が国際フィヒテ協会と日本フィヒテ協会で発表してきた論文を中心にまとめられた論集である。ルソー、カント、ヘーゲルといったフィヒテを取り巻く哲学者たちとの思想的な関連と緊張を深く意識しつつも、つねにフィヒテのテクストに立ち戻りつつ考察を続ける筆致に、著者のドイツ観念論研究者としてのバランス感覚が窺われる。テクストが書かれたときのフィヒテの意図と問題状況に即してテクスト内在的にフィヒテの思考の構造を問い、フィヒテの諸テクスト間における連続と不連続を思想の発展という形式のなかに総合しようとする著者の方法的態度は、著者がヘーゲル研究のなかで身につけたセンスであろう。

行為論としての知識学における「相互承認の弁証法」的解釈にはじまって、『自然法論』、『道徳論』、『閉鎖商業国家論』、『ドイツ国民に告ぐ』、『法論』、『国家論』というフィヒテ実践哲学の主要著作を相互の構造連関性に着目して解読し、最後に「ペスタロッチの教育論とフィヒテの陶冶論」で締める編成に、著者のフィヒテ論の独自性と達成が表れている。

フィヒテにおけるペスタロッチ思想の知識学への受容の問題は、旧来から一つの論点としてあったが、「陶冶」と「教育」という二つのキーワードを、教育論という特殊領域に囲い込むのではなく、むしろフィヒテ実践哲学全体の中核概念として正面から捉え直そうという著者のアプローチは新鮮である。「陶冶」と「教育」を「自由」と「強制」として捉えるならば、そこから知識学に始まるフィヒテの自由の哲学の構造と発展のダイナミズムが見えてくる。

このアプローチは、フィヒテ中期の法と倫理と政治のトリアーデともいえる『自然法論』と『道徳論』と『閉鎖商業国家論』を、連続かつ一体のものとして読み解こうとする、著者の基本的な問題意識につながるものである。とりわけ本書のハイライト部分ともいえる第三章から第六章までは、旧来の先行研究のイデオロギー的制約から離れて、むしろ既存の解釈イデオロギーに批判的に対峙する足場をテクスト内在的に提供してくれる。

戦後のフィヒテ研究において、『閉鎖商業国家論』は、『ドイツ国民に告ぐ』とともに、評価の難しいテキストであった。『閉鎖商業国家論』は、19世紀から20世紀にかけての社会主義思想の系譜のなかでは肯定的に評価され、第二次世界大戦以後の全体主義批判の系譜のなかでは否定的に評価されてきたからである。本書のアプローチは、そうした先行研究のアナクロニズム的な評価文脈から一度離れて、テクストそれ自体を、それに前後するフィヒテの作品群のなかに置いて読めば、どのようなコンテクストが浮かび上がってくるかという新たな読解の可能性を示唆する試みとなっている。

フィヒテは所有の根源を、個人の自由な行為の排他性から生ずる権利と捉える。『自然法論』においては、「生きること」が「自由な活動の最高かつ普遍的な目的」であるとされていたが、『閉鎖商業国家論』においては「自由に」「人間らしく」生きることが、「人間の権利と使命」の要求であるとされる。

「人間らしく生きる権利」は「労働に対する権利」を導きだす。国家は、国民が生きる権利の主体として人間らしく生きることができることを保証する装置であり、そのための国内産業秩序の調整管理の機能を担う。ここに自由(権利)とそれが保証されるための法=強制との緊張関係が生まれることになる。本書を読むと、『自然法論』と『閉鎖商業国家論』とがひとつながりであることを確認させられるだけでなく、そこに「「永遠平和のために」論評」を始点とする「平和」のための「法学」と「政治学」というコンテクストの存在に気づかされる。
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2017年6月16日 新聞掲載(第3194号)
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この記事の中でご紹介した本
現代に生きるフィヒテ  フィヒテ実践哲学研究/行路社
現代に生きるフィヒテ フィヒテ実践哲学研究
著 者:高田 純
出版社:行路社
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