猪狩三郎編『現代はいすくーる短歌』(1985) 何となく仲間集まり何となく暴走してはパクラレにけり|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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現代短歌むしめがね
2017年6月27日

何となく仲間集まり何となく暴走してはパクラレにけり
猪狩三郎編『現代はいすくーる短歌』(1985)

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福島県の高校教員でアララギ派の歌人でもあった猪狩三郎が、教え子たちに作らせた短歌を集めて一冊にまとめたのが『現代はいすくーる短歌』である。折しも「校内暴力」が社会問題になっていた時期の刊行であり、暴走族、いじめ、偏差値、受験戦争、家庭不和などが高校生のリアルとして重要なテーマになっている。1979年から放映が始まった『3年B組金八先生』第1シリーズで取り上げられたテーマと多く重なる。

掲載されている短歌は大半が稚拙なものだ。編者も判っているので、収録歌は全て作者名を付さず「詠み人しらず」とし、技術的批評は行わず現代社会の表象としての解説を付与されている。たとえば「三年男子」の作である掲出歌はこういう具合。「学校や社会に背を向けた感覚、感情で仲間同士の心が通い合い、暴走と集団の仲間意識に酔いしれて、反社会的行動をすることに、何の後ろめたさも罪意識も感じられなくなる。そして、暴走族にも掟のようなものがあり、身内(仲間)をとても大事にするところがある」。ごく平凡なことしか言っていないように思えるが、そもそもこの程度の「リアル」すら共有されていない時代だったのだ。

俵万智の登場前夜であり、まだ口語短歌の方法論は一般に周知されていなかった。なので俗語と文語が一緒くたになった「パクラレにけり」なんて言葉遣いまで出てくるのが逆に面白い。『サラダ記念日』以前の口語短歌のサンプルとしても貴重な本である。
2017年6月23日 新聞掲載(第3195号)
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