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Forget-me-not
2017年6月27日

Forget-me-not(25)

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ナイロビの友人宅で開かれたパーティーにて。男たちばかりが10人ほど集った会は朝まで続いた。ⒸKeiji fujimoto
過去はいつも安全だ。もう自分を直接傷つけないし、傷ついたことがあっても通り過ぎているからだ。  未来は何が起こるかわからない。もしかしたら傷つき、くたばり果てるかもしれない。経験したことがないことに対して僕たちはとても慎重になるのだ。  その夜、近所の男たちとともにお酒を飲んでいると彼らが僕に聞いてきた。  「どうしてナイロビに来て俺たちを撮ることにしたの?」  ゲイとして育ったものの多くは成長過程で異性愛者よりも重い苦しみを経験する。しかしそんな過去にばかり固執していると、そこから抜け出せなくなる。  そう。僕はきっと過去の自分に区切りをつけ未来に向かうために、東アフリカという異国の地で自分と似た境遇を持つ男たちと過ごす現在を決断したのだ。  確かに明るい朝は来る。確かに暗い夜も来る。しかし人生とはほとんどが朝が来る前の夜明けだったり、夜が来る前の夕暮れの曖昧さに包まれているのだ。両極にばかり捕らわれていると、その間にある真実を見失う。  「酒だ、酒」気持ちを話し終えた僕の横で男たちが叫ぶ。「お前に会えてよかったよ。まだ朝まで時間はたっぷりとあるから、もっと一緒に会話を続けよう。人生の意味がわかるに違いない」  男たちが僕の肩に腕を回し、グラスにウイスキーを注いだ。 (ふじもと・けいじ=写真家)

2017年6月23日 新聞掲載(第3195号)
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