連 載 映画/映画作家/映画批評 ジャン・ドゥーシェ氏に聞く(12)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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ジャン・ドゥーシェ氏に聞く「映画/映画作家/映画批評」
2017年6月27日

連 載 映画/映画作家/映画批評 ジャン・ドゥーシェ氏に聞く(12)

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ゴダール(中央)とドゥーシェ(右端)

HK
 科学的認識と芸術的認識、二つの認識方法の共存とは、まさしくゴダールが行なっていることそのものではないでしょうか。
JD
 そうですね。彼の言うこと、為すことには理由があります。通常、彼の仕事は科学的方法の不確かさから来ています。ゴダールのやることは、モンタージュという根底について考え始めた時から、映画自体の起源の問題とも関わっています。つまりフィルムという物質の問題に関わっているのです。映画のフィルムを手に取ればわかることですが、一つのイメージがあります。そして小さな境界線があり、次のイメージがあります。全てのイメージは写真のように静止しています。このイメージに動きを与えるのは機械です。機械がフィルムを動かし、運動という錯覚を作り出します。一つのイメージが別のイメージと関係して、初めて映像という幻影が生まれます。要するに、フィルムという存在の時点で、撮影が始まる以前から、他のものに先立ってモンタージュというものはすでに存在しているのです。だからこそ、私たちがゴダールの映画をよく見ると、モンタージュについての考察が他の何にもまして主題となっていることが知覚できるのです。彼の現在の映画を見ると、三つの側面が共存しています。他の映画作家にも三つの側面があるのですが、ゴダールとは異なるものですし、彼の興味を引くものではありません。多くの映画作家は映像の中での高さ、深さ、奥行きの三つの次元により映画の空間を作り出しています。モンタージュも、このような奥行きにメリハリをつける要素として現れています。しかしゴダールの映画では、すでにそのような側面は身を潜めています。ゴダールは映画の中に、様々な要素が結合し分離する立体感を作ったのです。つまりモンタージュの水準でのモンタージュ、そして三つの新たな側面です。この時点から、映画の全てはモンタージュの問題となったのです。そして、そこでは直感、芸術、科学的省察という、三つの側面が表立ったのです。要するに、ゴダールは芸術についての科学的仕事をしていると言ってもいいかもしれません。
HK
 ゴダールのこうした方法論は、彼の批評の中にもすでに少し姿を見せていると思います。その一方でトリュフォーですが、彼の批評はまるで自分が映画を撮るかのようにして作品の内部から書かれています。
JD
 確かにトリュフォーの批評は映画作品の内部から、作品への親密さによって書かれているものです。トリュフォーは映画の規則に基づいた作家です。彼の映画を見ればわかるのですが、先頭に立ってヌーヴェルヴァーグの映画を作っていたにもかかわらず、最も古典的だったのはトリュフォーです。一方でゴダールが自分の初めての作品でしたこととは、その当時考えられていた映画の規則を問題にしないということでした。要するに映画の根本へ戻るということ、モンタージュにまで遡るということです。
HK
 バザンの考えを、つまり「禁じられたモンタージュ」という考えを最も引き継いでいるのは、逆説的に、ゴダールだと言えるところがあるのではないでしょうか。
JD
 そう言いたいところですが、違うと言った方がいいでしょう。バザン自身は、あなたが言おうとしているような「アンドレ・バザンの考え」は持っていませんでした。バザンはモンタージュという観念について、古典的な方法で考察していました。バザンは映像の連続性を基にする、ショット間の連関についての考えを持っていました。しかし、バザンにとってのモンタージュの概念は、物語を語るために古典的である必要があり、物語を語るための一要素でしかなかったのです。モンタージュ自体を考察してはいません。一方でゴダールは、モンタージュ自体を考察しています。バザンが映画の連続性についてしか考えていなかった一方で、ゴダールは映画の非連続性つまり断絶について考えているのです。

2017年6月23日 新聞掲載(第3195号)
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