食べる世界地図 / ミーナ・ホランド(エクスナレッジ)ミーナ・ホランド著『食べる世界地図』 文教大学 中山 あかり|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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【書評キャンパス】大学生がススメる本
2017年6月26日

ミーナ・ホランド著『食べる世界地図』
文教大学 中山 あかり

食べる世界地図
著 者:ミーナ・ホランド
出版社:エクスナレッジ
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あなたがどこかへ旅行をしたとしよう。友人にその旅行の詳細について話すとき、何を最初に思い浮かべるだろうか。

私は過去に韓国へ旅行したことがあるが、帰国した際、家族に最初に話したことは食べ物の話だった。キムチが日本のものよりもずっと辛くてコクがあったこと、キンパという海苔巻きには韓国のりが使われていたこと、サムギョプサルは写真で見たよりもボリュームがあり、お腹が一杯になってしまったこと、屋台で売られていたお菓子が美味しかったこと―。そのため「食べ物は私たちを過去に引き戻し、記憶をよみがえらせる。…食べ物は私たちにその土地の生活を文字どおり「味わわせて」くれる」いう本書の言葉に私はひどく共感した。

本書は作者が訪れた世界の39の国・地域の料理を作者自身の思い出や考えを交えて綴ったエッセイ本である。各国・各地域で作られているその素材・材料からその土地の歴史や地理、食文化を展開し、各項の末尾に料理のレシピを挙げるという、一言で言えば歴史書と料理本を融合させたような本である。章と章のあいだに関連性はないため、自分の興味がある国・地域のページから読むことができ、最初から読まなければ全体が理解できないということは全くない。また、他の食に関連する書籍と異なるのはただ各国の料理を列挙しているのではなく歴史や地理までも論じていることであり、普段目にする料理の「材料」や「料理」そのものがどの国・地域から派生してきたのか、植民地化や移民によって形成された料理など様々な視点から各国の「料理」を見ることが出来る。

著者は本書のことを「世界のおもな料理を作り上げている積み木について、興味を持った人に向けた入門書である。」と説明しているが、意外にも紹介されている国々・地域の歴史や食文化、地理の情報は深く掘り下げられているものも多く、著者自身が紀行し、体験したことを挙げていることもあって、分厚い歴史書より役に立つ情報が多い。

「丸く油が浮かんだ黄金色のスープ」、「とろりとしたソースにパンをつけて―」など料理の表記の仕方が多種多様であるため、一つ一つ思い浮かべて読むと、まるで目の前にあるかのような気持ちにさせられる。しかし、料理に関する図や写真がないため、実際にはどのようなものなのか分かりづらく、文字や文章だけで想像するには限界がある。特に各項の末尾の料理のレシピが挙げられている所には写真が必要ではなかっただろうか。また、フランスやイタリア、スペイン、インドは地域に分けて細かく説明されているが他の国々は地域ごとには分けられておらず、「東ヨーロッパ」など地域を一まとめにして1項としている面もあるため、著者の興味関心が西ヨーロッパに偏っている傾向がある。「世界の39の国・地域の料理を紹介」ならばもう少し地域の幅を広げるとより良いのではと思える。

歴史書としても料理本としても利用できる本書はベッドの上でもキッチンでも世界の料理を想起し、旅することが出来るだろう。「料理」は“混血”であるという著者の主張は我々の「料理」に関する見方を変えることに繋がるかもしれない。
以下のオンライン書店でご購入できます
2017年6月23日 新聞掲載(第3195号)
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