熱狂を演出、躍動感あふれる文章ー小谷展宏「オーストラリア・パース紀行」 手堅いリアリズム小説の手法ー吉開那津子「谷間の家」|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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2016年7月1日

熱狂を演出、躍動感あふれる文章ー小谷展宏「オーストラリア・パース紀行」
手堅いリアリズム小説の手法ー吉開那津子「谷間の家」

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紫陽花や「挨拶は現代の禅語である松原泰道」軽舟

幻想的な青い羽根をもつルリビタキが玉野の公園にいたという朗報を紹介した田辺順子の「小さな命へ(十二)―青い鳥を探して」(「女人随筆」一三七号)を本欄四月に紹介した。

先日、日本野鳥の会から着払いで送ってもらった「野鳥観察ハンディ図鑑新・山野の鳥」にそのルリビタキが掲載されており、ゆっくり眺めることができた。野鳥図鑑に親しむことになった。

「大きさでわかるおさんぽ鳥図鑑」の表紙にはカワセミが出ている。何気なく見ていて、カワセミが青い鳥であることに気づいた。これまで近くの野川でたまに見かけるカワセミは朱色に見えていた。図鑑には「長いくちばし、青い背中、オレンジ色のおなかが特徴」と解説がある。青い鳥は近くにいた。

最近の同人雑誌をめぐる問題の一つとして、時代の趨勢として同人の高齢化、同人減をあげる記事を見かけるようになった。

そこで、私は「美濃文学」が地域社会と密接で、目次写真に美濃の美しい山と家並みを撮っているなどの例を上げ「これからは地域の同人雑誌としても読者と共に密接に存在していくことで、文芸同人雑誌の活路が開かれていくのではないか」と提案した。

その後、松山市で七十五号まで発行されている「アミーゴ」の地域社会と密接した充実した編集ぶりを紹介した。

今月は小谷展宏の「オーストラリア・パース紀行」(「播火」九十九号、兵庫県姫路市。読者寄稿)が海外旅行で一種の熱狂を演出した躍動感あふれる文章だ。

姫路市は国宝姫路城、椎名麟三の出身地などで私たちにも馴染みの深い都市であり文化活動のさかんな土地柄である。現在、同人は十八名に特別同人一名、誌友一名。

「兵庫県と西オーストラリア州は姉妹提携を結んでいる。今年はその35周年記念で日本祭りが西オーストラリア州都パース市で盛大に行われるにあたり、旅費は外務省のはからいで、姫路の播磨の黒田武士顕彰会8名が招かれて参加した」

総領事とも会見。その後、日本人学校を訪れた。お祭り会場では五人が鎧兜の武者姿で舞台に上がり、他の人達も着物姿や袴姿で、パフォーマンスを演じて日本文化を披露したそうだ。地域で読まれる雑誌になっている。

小説では吉開那津子「谷間の家」(「民主文学」50周年記念臨時増刊号)にひかれた。手堅いリアリズム小説の手法が効果を発揮している。終戦当時を懐かしく思い出した。

清水信「富士正晴論」(「火涼」72号)、三田村博史「杉浦民平の立ち位置と北川朱美の詩人論集」(「中部文芸」一〇一号)、いくつになっても他者のことをリアルに書けるのが大先輩ご両人の強みだ。

ところで、去る六月十五日の夕刻、東京丸の内の銀行倶楽部で開催された第三十二回太宰治賞の贈呈式と記念パーティに今年も招かれて出席した。

受賞作は一九八八年生まれ夜釣十六の「楽園」。やや変わったペンネームの女性の作者が受賞挨拶で登壇、喜びと抱負とを熱く語った。「楽園」のテーマは「戦争記憶の継承」と「受賞の言葉」で述べている。

「群系」36号。評論専門の貴重な同人誌。特集「同時代の文学」は、草原克芳「中上健次論」、大堀敏靖「村上龍「限りなく透明に近いブルー」」等。全体によく研究されているのだが、やや解説風なのが気になる。

その他、後藤純一著『水の匂い』(ブイツーソリューション)、及川直志「ある居酒屋の思い出」(「飛火50号」)、大巻裕子「磨く人」(「北陸文学」八十号)、岡本信也「沈黙についてデザイン生活手帳38」(「象」八十四号)、田中信爾「行く春」(「AMAZON」四七七号)、名村峻「叔父たちの戦争」)、「別冊関学文芸」五十二号にひかれた。
2016年7月1日 新聞掲載(第3146号)
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