Forget-me-not(26)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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Forget-me-not
2017年7月4日

Forget-me-not(26)

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ケニア北西部にあるトゥルカナ湖で休暇を楽しむ男達。この小旅行の数週間後に僕は一年暮らした東アフリカを去った。ⒸKeiji fujimoto

朝起きると、真っ黒になったバナナにカビが生えていた。食物が腐っていくように、人間関係においても賞味期限がある。

物質社会に生きる僕たちは捨てることを恐れる。たくさんのものに囲まれ、思い出を染み込ませ、それらを失うことを恐れる。

人間関係も、お金も、愛情も、皆無では生きていくことはできないが、抱えすぎても前に進めなくなってしまう。僕の周りでは、これまでにたくさんの人間関係が賞味期限を迎えてきた。

捨てる時になって気がつくこともある。もっと違う風にできたのではないかということだ。しかし一度腐らせてしまった関係は、もう元には戻らない。

僕自身も死んでしまえば腐り、捨てられてしまうのだ。親しい人達がしばらくは覚えていてくれるかもしれないが、数年すればそれすらも危うい。

「みんなのことは絶対に忘れないから」

例に漏れず、僕はこの慣用句を去りゆくアフリカの大地で友人たちに述べた。彼らとの関係が今後どのように続いていくのか、賞味期限を迎えるのか。その答えはまだわからない。

しかし自分勝手な僕は願っている。僕のことを、僕たちが過ごした日々のことを、どうか忘れないでいてほしいと。

梅雨を迎えた東京の雑踏には様々な色の傘が咲き、子どもたちが賑やかに登校していく。その片隅には勿忘草が静かに芽吹き、今日も僕の日々は続いていくのだ。

2017年6月30日 新聞掲載(第3196号)
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