連 載 映画/映画作家/映画批評 ジャン・ドゥーシェ氏に聞く(13)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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ジャン・ドゥーシェ氏に聞く「映画/映画作家/映画批評」
2017年7月4日

連 載 映画/映画作家/映画批評 ジャン・ドゥーシェ氏に聞く(13)

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ジャン=ピエール・レオー(左端)、ドゥーシェ(中央後ろ)、ジャン=ルイ・コモリ(右端後ろ)
JD
 パリの近郊で起きた洪水をトリュフォーが撮影し、ゴダールが編集した『水の話』という1958年の短編があります。この作品の中で、トリュフォーは物語を語ろうとしていたのですが、ゴダールは物語を語る気など少しもありませんでした。要するにゴダールがしたこととは、単純にショット同士を関連づけただけのことでした。私の目には、この作品が何にもましてゴダールの探求の出発点として映ります。そこにはすでに純粋なモンタージュしかありませんでした。『水の話』は物語を語る映画だったはずなのですが、いつの間にかモンタージュを語る映画になったのです。加えて言うならば、モンタージュ自体は何も語りません。
HK
 要するに、一見するとバザンとゴダールは連続性と非連続性という表裏の関係について考察している。しかしバザンが連続性という概念から出発してモンタージュを考察し始めた一方で、ゴダールはモンタージュという映画の根底について考察し始めたから非連続性という問題に行き当たった。つまり両者の問題の捉え方は出発点が異なる。だから逆説的に引き継いでいるわけではない、ということでしょうか。
JD
 そのように言っても問題ないと思います。
HK
 何度か話に出てきている「作家の映画の生成」とは何なのでしょうか。ゴダールとモンタージュ、そして連続性と非連続性という言葉が出てきているので、フリッツ・ラングを例に説明していただけないでしょうか。彼の映画はどのようにして生成していくのでしょうか。
JD
 フリッツ・ラングのモンタージュとは難しいものではありません。クラシックでありながらアンチクラシックでもある。ラングの映画のすべてのショットは、その画面の中に次の映像をすでに含んでいます。一つ目のショットが二つ目のショットの原因となります。同様にして二つ目のショットは一つ目のショットの結果でもあるのです。そして二つ目が、三つ目を引き起こし、その後も同じように流れが続いていきます。これだけでもラングが映画史の中で特筆すべき作家であることがわかります。

このことに加えて、ラングのモンタージュにはもう一つ別の側面があります。ラングは流れるようなモンタージュを思うがままにしながらも、同時にその映像の繋がりの間に、正真正銘の繋がりを作る代わりに、断絶を生み出すことも自由としていたのです。このような断絶は、いずれにせよ一つの衝突(=ショック)です。ラングの作品を見ると、エイゼンシュタインの仕事を公然と自分のものとしてしまっていることに気づかされます。エイゼンシュタインは、ショットとショットの衝突から生まれるモンタージュの効果についての考察をしていました。ラングの映画にも、まぎれもなく同様の衝突が見られます。しかしラングにおいては、この衝突が一つに結びついたものとして現れるのです。
HK
 映画批評とは何なのでしょうか?
JD
 批評とは芸術の一つの瞬間です。批評は完全に芸術と結びついています。一つ例を取りながら説明しましょう。どのような画家でもいいのですが、一人の画家がキャンバスの前に立ちます。何よりもはじめに、何を描くかということが問題になります。必然的に、これから行おうとすることの展望を得るために、自分の作品から少し距離を取り、客観的にならなければいけません。この瞬間から一人の芸術家は、すでに創造行為の中にいるのです。要するに、批評は作品制作に先立って存在しているのです。批評は芸術の中に存在しているのです。小説であれ音楽であれ建築であれ、すべて同様にして批評は創造の中に存在しています。批評は作品の一部をなしています。言い換えるならば、芸術家は批評家であることをも強いられているのです。

そして、創造過程の中に組み込まれた批評と同じようにして重要な、もう一つの批評があります。それが一般的に批評家と呼ばれる人たちの行う批評です。芸術家自身が解らない作品の内部を理解するように試み、そして批評しなければならないのは、創造行為の結果としての作品を鑑賞する批評家なのです。 〈次号へつづく〉
〔聞き手=久保宏樹/写真提供:シネマテーク・ブルゴーニュ〕

2017年6月30日 新聞掲載(第3196号)
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