【横尾 忠則】アモーレ、アモーレ、アモレミーヨ 歌いながら目覚める誕生日|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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日常の向こう側ぼくの向こう側
2017年7月11日

アモーレ、アモーレ、アモレミーヨ 歌いながら目覚める誕生日

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2017.6.26
 アトリエを囲む樹木が繁茂してアマゾンの密林とそう変りない。猿やワニがいないだけの話で、鬱蒼とした熱帯のムッとするあの空気を想い出した。

しばらくぶりに瀬戸内さんにご機嫌伺いの電話をする。「きのお、あの人が来たのよ。それそれ横尾さんもよく知っている小説を書く人」。平野啓一郎さんだとわかったが知らんぷりを装う。「若い人で子供二人いる人よ。美人の奥さんも一緒で」「ホホウ、美人のね」「わかんない?」「エー誰ですかねえ」とぼける。「とにかく5時間しゃべりっぱなしだったの」。そろそろ白状して「平野さんでしょう?」と言う。「ソソソソッ、平野さん!」「彼も5時間しゃべったの?」「平野さんは笑いながらうなづいているだけで、奥さんも黙ったまま」「瀬戸内さんのしゃべりに合の手を入れるタイミングが取れなかったんですよ」「ハッハッハッハ、そうかしら? ところで横尾さんは元気?」「そこそこです」「誰かに聞いたら入院してらっしゃるんじゃないですか? なんて言ってたわよ」「入院常習犯ですからね。それにしても、その人の情報古いですね。2年ほど前の話で、今は毎日週刊誌ばかり読んでますよ」「アラ本当、私も週刊誌ばかりで、週刊誌いちばん面白いわよね」

死についての哲学書を読むが、どうも納得いかないと思ったら、人は死ぬと無になるということを前提にして論じているからで、ぼくには通じない哲学でありました。だけど必ずしもそーじゃないと思っている人はアメリカには半分以上いると新聞が言っていた。

2017.6.27
 先年亡くなった映画のプロデューサーの藤井浩明さんに郷里の家の前の長屋に住むという〈川原しのしお〉という変った名の作家を紹介される。ぼくは彼女に「今日は81歳になるぼくの誕生日です。80代は男盛りの世代です」と言ったところで目が覚める。夢の中で誕生日をちゃんと認識しているのがおかしいと思う。

ローマ駅(?)の構内で中年のグラマーな女性から映画「鉄道員」の「鉄道員のテーマ」の歌詞を彼女に歌ってもらって、ノートを取る。「アモーレ、アモーレ、アモーレ、アモレミーヨ、インブラッチョテメー、スコールド、ニドローレ、バイオレスタコテー、シンノメモロー、バイオレスターコテー、シンノメモロー、ビアンヌ、ビアンヌ、ビアンヌ、アモレミーヨ」って具合に必死に書きとめる。そして歌いながら目を覚ます。そのあとも布団の中で歌い続ける。

足のマッサージの最中に平野さんから電話。マッサージをしてもらいながら40分ばかり瀬戸内さんが平野さんの名前が出てこなかった話をする。「今日は馬鹿みたいな話の電話だったねえ」と言うと、「今度は問題提起をしましょう」と平野さんが言うので笑った。
成城ポレールで誕生日会

2017.6.28
 朝からメダカの甕の中に溜った泥を取り出す作業をするが、長時間うつむいたままだったので胃液逆流ナントカになる。

午後、国立東京医療センターの眼科へ定期検診に。日大病院で白内障と言われて手術の寸前、深夜病院を逃げ出して正解。白内障は誤診。

夕食は成城のレストラン・ポレールで一日遅れの誕生会をスタッフと。

2017.6.29
 恒例の虎の門病院へ神津善行さんと。酒も煙草もグルメでもないのに尿酸値がちょい高い。「横尾さんは薬が嫌いなので食事で治しましょう」。一日にペットボトル2本の水を飲んでいるがまだたりないと言われる。食事時にはお茶を2、3杯飲んで下さい。

2017.6.30
 王貞治さんが「ヨコオちゃん!」と言って2人でコラボの本の話をホテルの個室で行う。そこに某新聞社のエライ人が来て、何やらイチャモンをつける。同席していた紫吹淳さんが迷惑そうな顔をしている。窓の外の景色は中学時代の教室から見る田舎の風景だ。夢を記述することでシンクロニシティが起こるとユングは言うが、実際にシンクロニシティは度々起こる。

神戸から山本さん、林さんが次回展の企画を持って来るが、ウーン、もうひとつだね。考え直してもらう。山本さんは今晩から十和田市現代美術館の個展へ。

2017.7.1
 知人が数人。その中に35年ほど前に亡くなった編集者の黒沢さんが。「黒沢さんのあとに亡くなった森さんと向こうで会いましたか」と聞くが沈黙。夢でも言えないことがあるのかな?

雨が降るのか降らないのかはっきりしない一日。描きたいのか描きたくないのか、こちらもはっきりしない。夜の散歩に。酒も飲まないのにちどり足。

2017.7.2
 一晩中眠った感触なし。

増田屋のあと山田洋次さんと都議選の投票に行って風月堂で白玉ぜんざい。創造の根底には馬鹿馬鹿しい要素がある。という話をしながら、山田さんの斎藤寅次郎さんの話で、穴を掘り続けて、出たところが北海道だった。「なんで北海道だ」と言われても、「わしゃ知らん」というこの無神経さが芸術なんだ。

都議選の自民の歴史的大敗と藤井四段の29連勝どまりのニュースでやや夜更かし。(よこお・ただのり=美術家)
2017年7月7日 新聞掲載(第3197号)
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