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八重山暮らし
2017年7月11日

八重山暮らし①

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石垣島川平で。きらめく海は友達のよう。
娘は服のまま飛び込んでいく。(撮影=大森一也)
日本の南。沖縄本島より更なる南の果て「八重山」。島言葉では「やいま」と呼ぶ。日本最西端の与那国島からは時に台湾の島影が見えるという。ここはアジアを繋ぐ道だ。
「風が生きている」

八重山に訪れて、まず感じた。脳天を射る鋭くつよい陽ざし。海と密林が醸すねっとりと湿り気を帯びた空気。生命力をはらんだ風が流れる。するとこわばった手足が躍動し、月の光のような安らぎが胸に満ちた。

八重山諸島には十一の有人島がある。清水のごとく澄んだサンゴ礁の海に島々がちりばめられている。島の先輩は旅の人と語らう。
「若かりし頃にはサバニ(木造の帆舟)を操り、海を渡り歩き、島々を行き交ったさぁ」と。

四方をとりまく海は暮らしを隔てるものではなく、日々の生活に豊かな糧をもたらすための道標となった。

島に暮らし、やがて20年になる。だのに空と海の瑠璃色のまばゆさに歩はゆるみ、言葉もなく見惚れる。天地(あめつち)に育まれた風通しのよい思考、島人の闊達な振る舞いに心がほどけていく。この八重山が原風景となる幼い娘の手をとりながら、今日も「旅の人」を生きている。
2017年7月7日 新聞掲載(第3197号)
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