連 載 映画/映画作家/映画批評 ジャン・ドゥーシェ氏に聞く(14)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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ジャン・ドゥーシェ氏に聞く「映画/映画作家/映画批評」
2017年7月11日

連 載 映画/映画作家/映画批評 ジャン・ドゥーシェ氏に聞く(14)

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鎌倉・鶴岡八幡宮を訪れるドゥーシェ
HK
 ここまで言われてきたことは、長年にわたって続けてきたジャン・ドゥーシェ流の映画批評の基礎と言ってもいいのではないでしょうか。バザンやトリュフォー、ダネーとは異なる批評法かと思います。
JD
 ダネーの映画批評は、私のものと多少似通ったところがあります。それでも彼の批評は少し哲学的すぎるところがありました。十分に「映画批評」を行えていなかったような印象があります。彼とは長年の友人でもありましたし、映画についての興味深い議論も何度か交わしました。ダネーの仕事に何か言うとしたら、それは彼が「映画批評」を十分に行おうとしていたかどうかということではありません。おそらく彼は根本的なところでアンドレ・バザンのようになりたかったのではないでしょうか。彼の批評の軌跡をたどると、70年代から80年代にかけての現代思想の影響が多少なりとも伺えます。しかしバザンよりも深い映画の考察にはたどり着くことができなかったと思います。それでも彼が特筆すべき仕事を残したことは確かです。

私の映画批評に関して言うと、できる限り哲学的であることを避けるように努めています。大学で哲学を専攻した影響もあり、私の映画批評も少し哲学的なところがあるかと思います。しかし、私は一つの作品に、あくまでも一つの対象として接するよう心がけています。要するに、一つの客体を分析します。これが私と60年代以降の『カイエ』の大きな隔たりです。今日の映画批評を見ると、そのような隔たりを強く感じます。
HK
 以前、話に上がった近年の日本映画に戻りましょう。今日の日本映画についてはどのようにお考えでしょうか。前回の話ではここ20年来、つまり90年代の終わりごろから日本映画が、かつてとは比較にならないほど小さなものとなってしまっている、との旨でした。
JD
 確かに以前の日本映画と比べて小さなものとなってしまっています。しかし、今日の日本の映画を見ると、生まれ変わりつつあるという印象があります。例えば、黒沢清はいい作家だと思います。つい先日、封切られた『クリーピー』はいい作品でした。しかし、日本にはすでに溝口健二、小津安二郎、成瀬巳喜男という、映画史に名を残す3人の偉大な作家がいました。その周りにも黒澤明や他の大作家が、映画の歴史上、あまり類を見ないほどいました。要するに、日本には非常に偉大な映画が存在していたのです。そうであるからこそ、このような偉大な映画を今日まで引き継ぐことは、それほど難しくなかったはずです。そうした歴史はイタリアから姿を消してしまった映画と少し似ています。イタリアの絢爛たる映画は、テレビというメディアを通じてベルルスコーニによって一度息の根を止められてしまいました。おそらく今日のイタリアの映画も、日本と同じように生まれ変わりつつあるのだと思います。
HK
 今日においても、イタリアと日本には優れた作家がいると言えるのでしょうか。
JD
 はい。長年にわたる映画の伝統があるので、何かが残されています。
HK
 それでもかつてのようには偉大ではない、ということですか。
JD
 かつてのような偉大な作家がいなくなってしまったこと、それが問題なのです。日本とイタリアに加えて、アメリカ映画でさえ状況は似通ってきました。今日のアメリカ映画を見ると、何人かの非常に偉大な映画作家がいます。しかし、かつてのアメリカ映画とは比較にならないほど少なくなっています。それに加えて、今のアメリカの偉大な作家たちは、ハリウッドで仕事をしない人たちだと言うことさえできます。彼らはもうハリウッドでは映画を撮らなくなってしまった。コッポラであれデ・パルマであれ、偉大な作家はもうハリウッドにはいなくなってしまいました。

<次号につづく>
〔聞き手=久保宏樹/写真提供:シネマテーク・ブルゴーニュ〕

2017年7月7日 新聞掲載(第3197号)
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