【横尾 忠則】クール(狂う?)ジャパンのポスター、ご指名なり|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」

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日常の向こう側ぼくの向こう側
2017年7月18日

クール(狂う?)ジャパンのポスター、ご指名なり

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2017.7.3
 ぼくには何の役にも立たない特異能力がある(らしい)。以前にも書いたかも知れないが、書店に行くと近くにいる人がドサッと本を落とすのが、30年以上も続いている。これが一度や二度ではなく、もう30~40回できかないだろう。特定の書店とも限らない。地方だって海外だって起こる時には起こる。今日も三省堂に入るなりぼくの後に立っていた店員がドサドサとまとめて本を床に落とした。自分には責任はないけれど半分はありそうなので拾ってあげる。一日に二度落ちたこともあり、あんまり頻繁に起こるので一時は日記の欄外に「今日も本が落ちた」と記していたもんだ。

高平哲郎さんが大阪に吉本興業が三つの劇場を建ててその中で一番大きいホールで外国人相手に「外連国小洒落日本」と題するハッタリ、ごまかしを利かせた邪道な舞台を演出、そんなクール(狂うじゃないの?)ジャパンを表象するポスターをということでこの私がご指名頂いて二〇年振りに高平さんと会う。その時、かって二人に共通のAさんがいたが、彼の消息を聞いた。すると「自死した」と。いつか彼に会った時はインドの聖者みたいになっていたっけ。
アトリエにて高平哲郎さんと(撮影・徳永明美)

2017.7.4
 長谷工主催の講演会に引っぱり出される。340名のシニア対象で何を語るかわからない自分に期待したが対談相手の社長さんは若いせいか、あまりシニア問題とは無関係な方向に話を進めてしまった。自分で決めたテーマをはずすところはぼくに似ている。聴衆の中で40数年振りに会ったかっての同僚の女性に、「あの人どうしている?」と聞くと「GもSも死んだわ」と。もう気になる人のことは聞くまい。みんな死んじゃっているんだから。気になるということはすでに死んでいるからなのか、単に偶然なのか?
東京ウィメンズプラザホールにて講演会

2017.7.5
 昨日は妄想の一日。そんなせいか妄想に襲われ不眠気味。

この間、虎の門病院の石渡先生に指摘された尿酸値が高くなっていることを気にして、ケミカルは嫌なので玉川病院の東洋医学の木村先生に相談に。「漢方では尿酸値を下げる薬はありません。西洋医学のケミカルです」。早速来週石渡先生の予約をとる。

朝日新聞の書評委員会へ。お弁当にうなぎがでるなら出席するかな? と冗談に問い合わせると「今日は本当にうなぎです」にびっくり。築地のナントカ亭の有名なうなぎだというが、うなぎは小さく、味も近所の店と変らず。

死に関する本を2、3持ち帰る。

2017.7.6
 尿酸値を下げるためにペットボトル1日4本はノルマ。終日水を飲むのに忙しい。

国書刊行会の清水さんがヌード写真集のツカ見本を持って来訪。大きいサイズを採用。

某新聞に某作家が新聞小説を連載することになっているが、その挿絵の依頼あり。「いちばんやりたくないのが新聞小説の挿絵。命を縮めます」とメールする。「作家と相談します」の返事。

2017.7.7
 外国から帰国する当日、荷造りが全然できていない。困った!国内の旅先で全員ゆかたを着ているが僕の帯がどこにもない。困った!困った夢二題。

今日は「7」が三つ並ぶラッキー7。何かいいことが?

2017.7.8
 どこだろう。山の近くに2、3人の友達といる。そのひとりは中沢新一さん。中沢さんが以前わが家に遊びに来た時、長椅子の上に立って、田谷力三の「岩にもたれた鉄砲を持った…ナントカ」という歌をふりをつけて歌ってくれた。それが面白いほど上手く、中沢さんに会う度に妻は「あの歌、もう一度歌って下さい」とリクエストをしたものだ。そんなことがあったので、今日も「あの歌、歌ってくれない?」と言ったら、歌ってくれた歌は別の歌曲だった。一番をバッチリ、朗々と歌ってくれた。「土井晩翠の詩なの?」と聞いたが、彼は笑うだけだった。この間も夢の中でイタリア女性が「鉄道員のテーマ」を一曲まるまる歌ったが、歌の夢が続く。

夕方、公園を散策。ぼくより若い老人が集まって将棋を打っていた。ちょっと覗くが、どちらが優勢かわからなかった。

2017.7.9
 昨夜遅く散歩のあと、ぬるい風呂に入ったせいか、湯冷め状態。微熱っぽいが強引に治す。

山田さんと増田屋で。いつも映画の話を聞くのが楽しみだ。斎藤寅次郎の映画は残っておらず台本を読まれた山田さんの話。戦前、空腹劇というのがあって、なんでも、水道管を壊してしまって、家の中が水浸しになる。御櫃がプカプカ浮いている部屋の中で泳ぐ家人。こんな馬鹿馬鹿しい映画を平気で撮っていた斎藤さんという監督はアールブリュットか?

本紙で僕の日記の次に読むのは田原総一朗さんの「取材ノート」だ。自民党の惨敗は、都民の具体的に「あのことがおかしい」と怒った結果なのに議員は誰ひとり「あのこと」で負けたとは気づいていない。気づいていても言いたくないのか、それとも言えないのか?(よこお・ただのり=美術家)
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2017年7月14日 新聞掲載(第3198号)
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