八重山暮らし➂|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
読書人よ、集まれ!

トップページ

特集

書評

連載

コラム

ニュース

読書人とは

  1. 読書人トップ
  2. 連載
  3. 八重山暮らし
  4. 八重山暮らし➂・・・
八重山暮らし
2017年7月25日

八重山暮らし➂

このエントリーをはてなブックマークに追加
竹富島のオンに集うツカサたち。
杜の中、苧麻の神衣装は灯火のようだ。 (撮影=大森一也)
聖地巡り、パワースポットなるものが流行っていると聞くようになったのは、いつ頃からか。八重山では、聖地とは島の神を祀る場所を意味する。むやみやたらに訪れる所ではない、と諭されてきた。
「そこでは草木の一本、小石のひとつも決して持ち去ってはならん」と。

とりわけ内奥に位置するイビは神のよりましとする聖域だ。島の神事を司るツカサ(神女)以外、足を踏み入れること自体タブーとされている。祭祀行事が執り行われる日、正装した島人は集い、ツカサに付き従い晴れて聖地へ赴く。

自然のままの杜、あるいは純白の砂浜や珊瑚の岩場にそれは忽然と現る。オン、ワン、ウガンなど島々により呼び名が変わる。島の周囲が僅か9キロあまりの竹富島でさえ28カ所ものオン(御嶽)があるという。
「子どもの頃、オンの前を通る時は頭を下げて走って行ったさぁ。独りきりの時、とりわけ、こわかった…」

島に暮らすおんなたちは一様に呟く。少女のえも言われぬおののきが、時を経て畏敬に変じる。神事の支え手となるおんなからおんなへ。聖地への畏れは無言のままに手渡されてきた。

その地に代々生まれ育った者であっても、安易に立ち入れぬ場所が八重山にはある。変わることなく、今も在る。在ることを心に携え生きる。それこそが島人たるつよさの源泉に違いないと深く思っている。
2017年7月21日 新聞掲載(第3199号)
このエントリーをはてなブックマークに追加
安本 千夏 氏の関連記事
人生・生活 > 生き方と同じカテゴリの 記事