連 載 映画/映画作家/映画批評 ジャン・ドゥーシェ氏に聞く(16)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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ジャン・ドゥーシェ氏に聞く「映画/映画作家/映画批評」
2017年7月25日

連 載 映画/映画作家/映画批評 ジャン・ドゥーシェ氏に聞く(16)

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右から、ドゥーシェ、デプレシャン、シャブロル
JD
 フランス映画について、もし何かを言って欲しいのならば、本当に偉大なフランスの映画を二つ挙げましょう。何よりもまずジャン・ルノワールの映画があり、それに続くようにしてヌーヴェルヴァーグがありました。今日のフランス映画にも良い作家がおり、良いものだと思います。しかし、フランス映画が、かつてのように重要な作品があり、重要な映画作家がいるようには語られることはなくなってしまいました。相対的な観点から見ると、フランスには多くの良い作家が今でもいます。アルノー・デプレシャンのような非常に優れた作家もいます。しかし、もしデプレシャンがゴダールのように偉大な作家かと問われるならば、首を縦に振ることはできません。今のところは、その水準には達していないと言っておきましょう。
HK
 これから先の映画を、ドゥーシェさんはどのように考えていますか。ゴダールは「映画は過去の芸術である」と言っていますね。彼の言うことは何重にも意味がかかっているので、そのまま受け取れはしないのですが。そうした言い方をする一つの理由には、映画が必然的に撮影された「過去」しか見せられないということがあります。ルイ・リュミーエルの言葉「映画は将来のない発明だ」との関連性もありますね。そしてもう一つの理由が、「映画の世紀は過ぎ去っている」ということです。『映画史』の中では、映画とは19世紀の芸術が20世紀になって形を結んだものであったが、ヒトラーの起こした戦争よって不完全なままに破壊されてしまい、その後もテレビのような新しい映像と出会う中で、別の問題に対処しなければならなくなってしまった、と言われていたと思います。
JD
 映画という芸術の歴史的観点を考慮すると、ゴダールがそのように言っているのは間違っていません。映画という芸術は20世紀に不意に姿を現しました。映画とは、それ以前には決して存在することのなかった芸術です。そして瞬く間に極めて重要な芸術となったのです。20世紀という時代を振り返ると、絵画や建築、文学、音楽のような他の芸術も確かに存在しており、多くの非常に偉大な芸術家たちがいました。しかし、映画は完全に新しい表現としてこの世界に現れました。だからこそ、20世紀において映画が重要なものであったのは当然のことです。それ以前には存在していなかったのですから。つまり、以前とは比較することができないのです。反対に、今日における映画はどこを目指せばいいのかわからなくなっています。目指すべき点がわからないという言い方は、正確ではありませんね。むしろ、映画の中に以前よりも多くの可能性があり、そのために行く先を見失っていると言ったほうがいいです。つまり、映画という表現が依存している技術が可能とする表現方法がかつてよりも増えているのです。

他の芸術が映画のように技術に依存することはありません。本質的なところでは、あまり大きな影響を受けることはありません。音楽は長年の歴史の中で、科学的技術によって、その姿を根本的に変えられることはありませんでした。新しい楽器が作り出され、新しい音響が生み出され、他にも様々な発明がありましたが、全ては二次的な問題です。文学においても同様で、絵画においても同様です。20世紀における絵画は、確かに革命的なものでした。西洋絵画というものから、それまでの絵画の規則が解体されたのです。20世紀の偉大な芸術家たちが、規則を破壊しました。それは決して技術的な発明から発したものではありません。このような規則の解体は一種の勝利であり、それ以前の絵画に対する革命でした。映画とは別の問題です。

映画とは20世紀における新しい表現方法です。それゆえに、映画という芸術の中にいた作家たちによって、「映画とは何か」を探求することから始まりました。そして現在では、このような作家たちが行った創造に匹敵するようなものは残っていません。それだけのことです。 <次号へつづく>
〔聞き手=久保宏樹/写真提供:シネマテーク・ブルゴーニュ〕
2017年7月21日 新聞掲載(第3199号)
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