涼宮ハルヒの憂鬱 / 谷川 流(角川書店)谷川 流著『涼宮ハルヒの憂鬱』シリーズ  大正大学 小角 卓矢|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
読書人よ、集まれ!

トップページ

特集

書評

連載

コラム

ニュース

読書人とは

  1. 読書人トップ
  2. 書評
  3. 涼宮ハルヒの憂鬱 / 谷川 流(角川書店)谷川 流著『涼宮ハルヒの憂鬱』シリーズ  大正大学 小角 卓矢・・・
【書評キャンパス】大学生がススメる本
2017年7月24日

谷川 流著『涼宮ハルヒの憂鬱』シリーズ 
大正大学 小角 卓矢

涼宮ハルヒの憂鬱
著 者:谷川 流
出版社:角川書店
このエントリーをはてなブックマークに追加
涼宮ハルヒの憂鬱(谷川 流)角川書店
涼宮ハルヒの憂鬱
谷川 流
角川書店
  • オンライン書店で買う
涼宮ハルヒシリーズの原作小説は今のところ11巻発売されている。このシリーズは学園モノであり、また、SF作品としての側面もある。涼宮ハルヒという傍若無人な女子生徒が、キョンというあだ名を持つ男子生徒を振り回し、キョンは呆れながらも「やれやれ」と言って、涼宮ハルヒの後ろをついてゆく。これが、キャラクター同士の基本の力関係である。ところで「やれやれ」という台詞は主人公キョンの口癖である。この「やれやれ」という言葉に村上春樹を想起する人は多いのではなかろうか。ネット上では村上春樹っぽい文体として「やれやれ僕は射精した」という言葉でいじられている。僕は村上春樹も好きでよく読むのだが、確かに「やれやれ」という言葉をよく見かける。僕はこの「やれやれ」という言葉が無性に好きだ。僕がハルヒシリーズの書評をしようと思ったのも、この「やれやれ」について語りたかったからである。
「やれやれ」は、リズムが心地よい。僕は短歌を齧っているから、言葉のリズムの持つ力は理解しているつもりである。例えばアニメーション監督新海誠の作品群にもそれが見られる。 『君の名は。』のヒットした要因は様々語られるが、その一つとして、登場人物たちの聞き心地の良い言葉の掛け合いが世に受けたのだと僕は思う。これも言葉のリズムの力だ。「やれやれ」は、その汎用性も高く、色々な意味合いで使える場面はたくさんある。

そして「やれやれ」には別の力も備わっている。それは、緊張の緩和である。緊張の緩和とは笑いの起きる法則のようなもので、僕の記憶する限りこれを理論付けたのは桂枝雀だったと思う。簡単に説明してしまうと、何かしらの緊張状態が緩和されたとき、人は笑うというものだ。要するに涼宮ハルヒの突拍子のない発言や行動が緊張だとするとキョンの態度が緩和なのである。その象徴として「やれやれ」という感嘆詞が存在するのだ。これは長編小説の主人公のスタンスとして非常に重要だ。僕は大学で小説を書いていて思うことがある。それは、人に読ませる主人公のテンションである。どこか斜に構えていて、ダウナーで、一歩世の中から線を引いているような主人公は、読書という長い旅を共にする主人公の在り方として、非常に好ましいと思える 。キョンはハルヒシリーズ四作目の『涼宮ハルヒの消失』以降、この世界に積極的に関わってゆくという決意をして、ときおり熱血漢な場面を見せるが、やはり、涼宮ハルヒに翻弄されるキョンという基本的な構図は揺るがない。

総括すると、涼宮ハルヒシリーズが魅力的に感じる一つの要因が「やれやれ」であり、また「やれやれ」はリズム・緊張の緩和・主人公のスタンスをうまく機能させる、ということである。悲しいかな、現実世界で「やれやれ」と連呼している人は非常に鬱陶しい。それでも僕はハルヒシリーズを読むと思わず言ってしまう。やれやれ。

この記事の中でご紹介した本
涼宮ハルヒの憂鬱/角川書店
涼宮ハルヒの憂鬱
著 者:谷川 流
出版社:角川書店
以下のオンライン書店でご購入できます
2017年7月21日 新聞掲載(第3199号)
このエントリーをはてなブックマークに追加
【書評キャンパス】大学生がススメる本のその他の記事
【書評キャンパス】大学生がススメる本をもっと見る >
文学 > 日本文学 > 青春関連記事
青春の関連記事をもっと見る >