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2017年8月1日

読みごたえある怪談特集 財界人文芸誌「ほほづゑ」九十三号 人生の出会いの感動を率直に伝える 松下陽子「第2の人生、そのよき出会い」

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野川のせせらぎの音 薫 風と緑陰と有り難く 軽舟

机の上に置いてつけ放しにしている小型のラジオから島倉千代子の「鳳仙花」が流れていた。昨夜は夜中にテレビを見ていたので睡眠不足になって、うとうととちょっと眠っていたらしい。昭和を回想させる歌だ。

テレビではAIに世相の問題点を指摘させ、それについて識者が意見を交わすという番組だった。将棋の世界ではAIが大活躍している。将棋のAIが一番強いということになると、今後プロ棋士の存在はどういうことになるのだろうかと考えてしまう。

「書だ!石川九楊展 上野の森美術館」が七月五日から三十日まで開催されている。石川九楊氏から「開催のご案内」の案内状を戴いている。盛況らしい。是非行って見たいのだが、小金井から上野は遠く、熱中症も怖いので、行けずにいる。

二〇〇九年に氏が大佛次郎賞を受賞されたとき、帝国ホテルで開催された授賞式に招かれて参列、この時初対面だった氏に受賞のお祝いを述べたあと、かねて疑問だったことについて教えてもらったことがある。

「一字書いても書でしょうか」「一字でも書です」「エンピツで書いても書でしょうか」「エンピツで書いても書です」

氏は明快に答えて下さった。以来、誰かにボールペンで葉書を出すときも「書」の気分で書くことができた。

今月は財界人文芸誌「ほほづゑ」九十三号が「怪談」を特集。坪井珍彦「日本における、怪談の昔と今」、奥村有敬「今どき怪談」、今津真作「怪談―この奇怪な物語―」、中村禎良「タクシードライバーと霊体験」、伊藤文子「生と死を超えて」、今野由梨「庭園童子」、長谷川智恵子「日本の「怪談」は日本固有の文化」など、充実していて読みごたえがある。

松下陽子「第2の人生、そのよき出会い」(「アミーゴ」七十七号)は、人生の出会いの感動を率直に伝えている。

「38年間、小学校の教員をして、昨春、退職をした。独身で教育一筋に生きた人生であった。たくさんの人の支えのおかげで全うすることができた。退職の年は、その集大成との気持ちから思う存分のことをさせてもらった」

退職後は、非常勤の仕事をもらったが、勤務日はわずかだった。勤務のない日も前向きに暮らしたかった。まず第一歩を踏み出そうともった。そこで近所に住む先輩を誘って始めたのがウォーキングだった。

歩くと、心がときほぐされて何でも話せた。この先輩とのウォーキングが第2の人生を導いてくれた。一人でもあるきたくなってよく歩いて、体が川風を感じると、心が洗われ、自然に俳句が浮かんだ。愛媛新聞の文芸欄に投稿すると掲載された。

それらを随筆にまとめ、愛媛新聞社の懸賞作文に応募、県文化協会賞を受賞した。そのことを今度は同人誌「アミーゴ」に寄稿している。

退職後に先輩を誘って始めたウォーキングが、思いもかけない果実を生んでいる。

この他、宮川典夫「長良文学の復刊に寄せて」(「長良文学」二十一号)、堀井清「小説 四人で一緒に」(「文芸中部」105号)、若窪美恵「泰子、河内に吹く風のように」(「海峡派」一三九号)、井家途「巻頭詩 種を蒔く」(「佐賀文学」三十四号)、牛村圭「宴のあとに」(「琅」三十一号)、北原政典「詩 平成二十九年の桜」(「詩と眞實」八一七号)にひかれた。
2017年7月28日 新聞掲載(第3200号)
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