連載 映画/映画作家/映画批評 ジャン・ドゥーシェ氏に聞く(17)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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ジャン・ドゥーシェ氏に聞く「映画/映画作家/映画批評」
2017年8月1日

連載 映画/映画作家/映画批評 ジャン・ドゥーシェ氏に聞く(17)

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アヌシー映画祭にて、中央でタバコを吸っているのがドゥーシェ
JD
 最近では、非常に多くのテクノロジーが生み出されています。今日の映画は、新しいフィルム(=記録媒体)によって、そして新しいカメラや録音機材によって、多すぎるほどの可能性に恵まれています。このような多くの技術によって映画は再探求され、再発明され、再度かつてのような位置を占め得るかもしれません。そして、今までになされなかった何かを、新しく発明することすらできるはずです。要するに今日の映画の問題は、この点に集約されていると思います。問題は多重化した世界であり、経済的なものでもあり、技術的なものでもあるということです。そして、歴史的な問題でもあります。つまり、歴史の流れの中で人々が何かを信じようとすることで規定される時期もあれば、疑いによって規定される時期もあるということです。例えば、現在のフランスは、人々が非常に信用し合っている時代とは、間違っても言えないですね。
HK
 総選挙とか色々ありましたしね(笑)。
JD
 そうだからこそ、様々な表現が可能なのです(笑)。今日の世界は単純ではありません。それゆえに歴史家たちは、特定の歴史の流れを上から下へとなぞるのではなく、状況全体をまとめて考慮することを強いられているのです。例えば絵画について話をするのに、「印象派の影響が引き継がれている」と単純に言うことはもうできません。印象派というのは、確かに東洋に対する興味の幕開けでした。日本の浮世絵や東洋の芸術によって、西洋絵画は影響を受け、瞬く間にその姿を変えられてしまった。歴史的観点から見ると、反論の余地もない事実です。しかし今日において、東洋の絵画が西洋の絵画に何をできるのでしょうか。全ては過去の歴史の中の話です。
HK
 ドゥーシェさんは「映画は世界を表象することができる」とよく言っていますね。「現代の映画が断絶を主題としているのは、世界それ自体が断絶している」ということも、この考えから生まれていると思います。
JD
 その通りです。映画は世界を表象することができます。映画は「起こること」を見つめることができます。しかし、「起こること」を見つめるというのは、客観的なことではありません。例えば、あなたが何かを撮影しようとしたとしましょう。カメラを三脚の上に構え、そして目の前で「起こること」に立ち会います。あなたはそこで、カメラを通じて何かを見るはずですが、実際にカメラの前で「起きていること」とは別のことです。つまり、あなたは何かを見たと思い込むのです。そこで何を見るのでしょうか。このことに関しては、私が以前書いた「窓」についての話をしましょう。

「窓」という喩えを使っているのは、それが映画の中に不可欠なものとして存在しているからです。つまり、カメラという器械は、窓と同じ役割を果たします。窓を開ける、もしくは閉める、二つのことが可能です。技術的な観点から見て、二つの考え方が可能です。一つ目は世界についての「窓」を開けるということです。世界で「起こること」を見つめます。つまり、世界の方へ向かう。二つ目は「窓」を閉めるということです。例えばアパートの一室から中庭を撮影するとしましょう。その空間は建物によって閉じられています。そのまま眺めていてもあまり大きな変化はないかもしれません。しかし、このようなありふれた風景の中にも、何かが起こり得ます。別の言い方をすると、あなたは背後で、「起こること」を見ることができるのです。

これは「覗き」という行為です。窓を開けることとは別のことです。つまり世界をでっち上げる。その世界とは、あなたがいなかった場所であり、あなたの見られない場所ですが、想像の中に存在します。

要するに、映画を作るためには二つの可能性があるのです。ルノワールのように、世界に対して開かれた映画もあれば、ヒッチコックのように、背後で「起こること」を問題とした心的な映画もあります。このような観点からすると、映画が二重性の上に成り立っていることがわかるはずです。 〈次号へつづく〉
〔聞き手=久保宏樹/写真提供:シネマテーク・ブルゴーニュ〕

2017年7月28日 新聞掲載(第3200号)
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