【横尾 忠則】看護師さん、てんてこまい! 医力の威力。|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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日常の向こう側ぼくの向こう側
2017年8月1日

看護師さん、てんてこまい! 医力の威力。

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2017.7.17
 風邪(?)がぶり返したようだ。今日は「海の日」とかで病院も休み。昨日に続いて終日ベッドの中で病体をもてあます。

2017.7.18
 目が覚めると同時に声がカスカスで言葉にならない。徳永が玉川病院の中嶋先生と話合った結果、入院の指示が出て11時に先週と同じ病室に入る。早速、採血とレントゲン、心電図を取る。声がかすれてしまったのは、寝室の窓からの夜気のせいではと診断される。特別な治療は必要なさそう。自然に治るでしょうと担当医の梅澤先生。レントゲンも心電図も異常なし。体温も先週の36・9度から36・5に下っている。今回の病状と関係なく基準を超えていた尿酸値も血糖値も基準以下に、また腎臓の数値も下っているのには驚く。極力プリン体食品を避けたり、水分をかなり摂った成果が出たのかも知れない。点滴の予定だったが、看護師に代って若い研修医が針を刺すのが下手くそ過ぎるので、点滴は拒否し経口補水液OS―1を飲む。

夕食は徳永が桂花の酢豚をテイクアウト。

2017.7.19
 不眠。朝方夢を見た記憶がかすかにあるので少し(数分?)は眠った?

今日は特に検査も点滴もなし。午後、東洋医学の木村先生から今の状況に合った漢方を二種出してもらう。

明日から神戸に行かれる中嶋先生、今回の担当医梅澤先生らの問診では声だけが問題。

夕方、徳永が十和田市現代美術館の個展カタログの校正持参。問題なし。夕食は韓国料理のチヂミをテイクアウト。

2017.7.20
 就寝前に服用した病院から出された導眠剤のせいか、久し振りにたっぷり眠る。それにしてもまだ覚醒していないのに6時に看護師の大きい声で起こされる。不眠で悩んでいるんだから、多少の神経を使って下さいよ。

相変らずガラガラ蛇声。診察の結果胸が発していたゼーゼーは聞こえないので肺には問題ない、徐々によくなってきていると。だけどガラガラ蛇が治らない限り体力がつかない。

週刊読書人編集部より(撮影・筆者)
2017.7.21
 食前には毎朝(昼、夜も)吸入が行われる。煙のような湯気を口から吸う治療。相変らずガラガラ蛇がいる。不眠のせいもあるので今晩は必ず導眠剤を飲むように言われる。

午前中にタマの絵を一点仕上げ、午後にまた一点取りかかる。

本紙の連載300回記念とお見舞花を編集部から頂く。

夕食はコンビニの牛丼。

2017.7.22
 導眠剤を飲むが寝つき悪し。でも夢が眠った証明をしてくれる。

今上天皇が皇太子時代に我が国の最高司令官になって、冒険、活劇、戦争映画の如く、悪と対決。もうひとつの夢は退院して帰宅するとおでんが大喜びではしゃぎ廻ったり、抱きついたりで大歓迎。実際のおでんは、しばらく留守にしていても知らんぷり。まるで時間概念が違うらしい。

5時に目が覚めるが、再び小一時間ほど眠る。7時に病院の庭で太陽光線を浴びる。朝の光は睡眠時にメラトニンが分泌するので睡眠に有効な働きを促す。ついこの行為を忘れていた。入院と同時に行えばよかった。

午前中、昨日の描きかけの絵の制作に取りかかる。

夕方6時頃、突然息苦しくなり、胸が激しく波打つ。血圧がかって一度も経験したことのない175。体温もいきなり36・8に上る。一体何が起こったというのだ。パニック症状のような状態になる。心当りがあるとすれば今朝と夕方に二度下痢があった。だけど下痢と呼吸困難は関係ないといわれるが、その因果関係は看護師にはわからない。明日、明後日は先生は不在。そんな不安が躰に異変を起こしたのだろうか?

夜になって多摩川の花火大会の予習が始まったらしい。病室からは特等席。まるで夢を見ているようだ。これは夢だと書いてもいいくらいだ。
山田洋次監督と(撮影・横尾英)

2017.7.23
 呼吸がこんなに苦しいのは初めて。腹と胸が地震のように波打つ。全く呼吸ができない状態。看護師さんもてんてこまいでてんてきに走る。さあ吸入、さあ酸素加入と看護師もパニック。もし入院中でなければと思うとゾッとする。たまたま担当医の長先生が急患当番で出勤中(なんとラッキー)。このまま呼吸が安定しないと一体どうなったんだろう。先生の顔を見るまではショック死の不安に襲われたが、さすがこういう時の医力の威力は凄いと思う。現代医学のない時代には助からなかった人もいるだろう。喘息死亡者は実に多いのだ。

山田洋次さんがお嬢さんと英の車で見舞に。パニックの後だったのでストレスが消える? 動かない方がいいので、今日からコンビニ食を止め病院食に切り換えてもらう。

発作のない時は『文藝春秋』を読む。自民の村上誠一郎氏が安倍の行状に衣を着せない諫言は爽快だが、ぜひ行動あれ、と言いたい。元読売新聞編集委員の中西茂氏の読売批判は言いたくとも言えないことを言った。羽生善治さんの藤井聡太論は羽生さんの人間的正直さに打たれる。井上光晴さんの娘、井上荒野さんが父の恋人だった瀬戸内さんに会って両親と恋人の間柄の話をまるで一家の幸福なできごとのように語る(あゝ怖)。
2017年7月28日 新聞掲載(第3200号)
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