天使は奇跡を希う / 七月 隆文(文藝春秋)「入り口であること」が立ち位置  きらきらした思い出を作品に込めて|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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2017年7月31日

「入り口であること」が立ち位置 
きらきらした思い出を作品に込めて

天使は奇跡を希う
著 者:七月 隆文
出版社:文藝春秋
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「文春文庫に新しい風を入れたい」

初めてお会いした別冊文藝春秋の編集長がそう仰ったと記憶しています。
「なるほど」

私は期待された役割を理解しました。

ここでの新しい風というのは若い読者層。文春文庫はそこを厚くしたいようでした。

望むところです。

拙著『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』を出してから、私は自分の立ち位置が「入口であること」だと強く意識するようになりました。それまで本を買わなかった人に手に取ってもらい、読書を始めるきっかけになってもらう。実際にそんな感想をたくさん頂いて、嬉しいと感じたゆえでした。

だから今回も、そんなふうに。

あの文春だからと気負わず、いつものフォームで。ライトノベルで培った入りやすさやテンポ感を大事に、とにかくいつもどおりにと自分に言い聞かせました。

先述の『ぼく明日』を読んだ方々が期待するものを考え、今回も取り入れる。それは、読んでいる途中でそこまでの物語がガラッと違う意味を持つようになる、という構成上の仕掛けです。
《愛媛県今治の高校に通う少年のクラスにある日、本物の天使が転校してきた。偶然その正体を知った少年は、彼女が再び天国に帰れるよう協力することになる》

これが今作のあらすじですが、ここから想像される青春ボーイミーツガール的な展開が物語の中盤、ヒロインである天使の秘密がわかった瞬間からまるで違った意味を持つようになります。

徹底して期待に添う、というのが今回設定したテーマでした。

カバーイラストも、新しい風を吹き込むべく『君の名は。』のキャラクターデザインなどで有名な、アニメーターの田中将賀さんにお願いしました。これも私のいつもどおりであり、よく知る世界のものです。ちなみにこういうカバーはそれまでの文春文庫には例がなく、誰もやったことがないことが好きな私としては、クライアントの期待に応えつつも、ぐっと拳を握る喜びでもありました。

ところで、なぜ物語の舞台が愛媛の今治になったのかというと、担当さんがかつて暮らしていた町だからです。ご挨拶のときに話してくれた思い出話がすごくきらきらしていて、その場で「舞台はそこにしましょう!」と決めました。

そしていざ今治へ行くと、瀬戸内海といえば瀬戸内少年野球団だった私のイメージが大きく変えられました。

そこで見たこと、感じたこと、食べたもの、私や担当さんの人生の欠片…そういったものを作品に込めています。

特に、しまなみ海道の大橋を自転車で渡りながら見た海の景色が素晴らしく、その感動が少しでも伝わればいいなと思っています。(二八八頁・六三〇円・文藝春秋)

この記事の中でご紹介した本
天使は奇跡を希う/文藝春秋
天使は奇跡を希う
著 者:七月 隆文
出版社:文藝春秋
以下のオンライン書店でご購入できます
2017年7月28日 新聞掲載(第3200号)
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