浪人奉行 二ノ巻 / 稲葉 稔(双葉社)哀しい過去を持つ“無敵の男”  手に汗握る、勧善懲悪の決定版!|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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2017年7月31日

哀しい過去を持つ“無敵の男” 
手に汗握る、勧善懲悪の決定版!

浪人奉行 二ノ巻
著 者:稲葉 稔
出版社:双葉社
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浪人奉行 二ノ巻(稲葉 稔)双葉社
浪人奉行 二ノ巻
稲葉 稔
双葉社
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新シリーズ「浪人奉行」を発動させた!

ときは天明の大飢饉直後。火山噴火に地震、洪水に旱魃など天候不順がつづき、諸国は荒廃していた。自然、人の風上にも置けぬあぶれ者が出てくる。

しかし、悪知恵のはたらく外道は、天領や旗本領といった司直の手の及ばぬ無法地帯(わたしが目をつけた最大のポイントである)に根を下ろし、悪事を重ね、罪のない者を食い物にしていた。

そこは町奉行所の管轄外である。火付盗賊改方もありはするが、江戸市中の取締りで手いっぱい。それに関東取締出役(八州廻り)の設置もずっと後年のことだから、江戸近郊に跳梁跋扈する悪党はあとを絶たない。

この事態を憂慮するのが、日本橋越後屋と肩を並べるほどの豪商岩城升屋の主、九右衛門である。

九右衛門には、店に押し入った凶賊に金を盗まれ奉公人七人を惨殺された苦い経験があり、何としてでも同じ目に遭う者を少なくしたいという切なる思いがあった。

そこで白羽の矢を立てられたのが、本シリーズの主人公、八雲兼四郎である。

兼四郎はかつて無外流の道場で“無敵の男”と呼ばれていた剣客である。しかし、わけあって浪々の身になり、麹町の片隅で細々と飯屋「いろは屋」を営んでいる。

また兼四郎には、大切な女性を自分のせいで殺された哀しい過去がある。下手人は、やはり街道荒らしの無法者どもだった。それゆえに岩城升屋の要請に応え、悪党退治に乗りだすのである。

兼四郎には「浪人奉行」の名が勝手に冠される。いかにも役人風だが、そうではない。だが、徹底的に悪を懲らしめる正義の味方である。

修羅場にあっては凄腕を遺憾なく発揮する兼四郎だが、自分の店ではそんな素振りはおくびにも出さない。常連客からは「若大将」と呼ばれて親しまれている。

店には夜ごとクセのある男や女がやってきて、愚痴ったり喧嘩したり、励まし合ったりする。品書きは「めし 干物 酒」のみである。単に兼四郎が料理が苦手というだけなのだが、意外にも通好みの裏メニューがあったりする。

愛刀は和泉兼定。正義感が強く、立派な身体のイケメンである兼四郎。しかしながら、見た目と違って奥手で純情なところもあり、妙に凝り性だったりもする。包容力があり寛大で忍耐強い、まさに男の中の男である。

そんな兼四郎の助をする定次は、もとは町方の手先という経歴の持ち主。もう一人、兼四郎を「兄貴」と慕う橘官兵衛は主君が改易されて浪人にならざるを得なかった不運な男で、アクが強く泣き上戸、女好きが玉に瑕という個性派である。

とにかく手に汗握るスピーディな物語を展開させ、悪をバッタバッタと斬り捨てる、これぞ勧善懲悪の決定版といわしめたい!(二七二頁・五八三円・双葉社)

この記事の中でご紹介した本
浪人奉行 二ノ巻/双葉社
浪人奉行 二ノ巻
著 者:稲葉 稔
出版社:双葉社
以下のオンライン書店でご購入できます
2017年7月28日 新聞掲載(第3200号)
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