代表的日本人 / 内村 鑑三(岩波書店)岩波文庫 これほど長く生命力を保った、まれなる著作 内村 鑑三著、鈴木 範久訳『代表的日本人』|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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2017年7月31日

岩波文庫
これほど長く生命力を保った、まれなる著作
内村 鑑三著、鈴木 範久訳『代表的日本人』

代表的日本人
著 者:内村 鑑三
出版社:岩波書店
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代表的日本人(内村 鑑三)岩波書店
代表的日本人
内村 鑑三
岩波書店
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内村鑑三により本書のもとになる英文『日本及び日本人』が出されてから百二十三年、人物だけをまとめた『代表的日本人』からも百九年が過ぎた。文学作品は別として近代日本人の著作で、これほど長く生命力を保った著作はまれである。

その理由について、ここでは今日までに訳者の耳に入った読者の言葉を紹介したい。

1「本書があれば道徳教科書は要らない。これだけで足りる」

本書に登場する西郷隆盛、上杉鷹山、二宮尊徳、中江藤樹、日蓮上人の五人は、いずれも昔の偉人伝や「修身」などの教科書にも登場する機会の多い人物である。しかし内村の描き方は、教科書とは違っていた。たとえば、中江藤樹というと、昔の教育を受けた人なら母の言葉はなんでも聞き従った孝行息子のように覚えている。ところが内村は本書のなかで、母の言葉でも逆らう藤樹を描いている。母から容貌のために妻を離婚するように言われた時のことである。息子は「母上のお言葉ですが、天意に反してはよくありません」ときっぱりと断っている。このほか他の人物も、為政者の命令よりは天の声・民の声に耳を傾ける人々である。

2「いつも五冊ぐらいは手元に置いていて人に差し上げている。」

このように初対面の人から告げられたことがある。芥川賞作家の森敦が岩波文庫から出ている同じ内村鑑三の『後世への最大遺物・デンマルク国の話』を常時数冊は買いだめしておいて配っていた話を読んだことがある。これらが未だ世に出る前の森自身を絶えず鼓舞した書物だったからである。『代表的日本人』にも同じような読者がいたのであった。『代表的日本人』や『後世への最大遺物・デンマルク国の話』ばかりでない。このように岩波文庫には、同じ人により同じ本を何度も買い直した話が多い。

3「カバーの肖像画により登場人物がわかりやすい」

最近では岩波文庫のカバーについては、編集者から著者や訳者も相談を受けることが多い。『代表的日本人』に関していうと、まず浮かんだのがドイツ語訳版『代表的日本人』(一九〇八)に収められた肖像画であった。実はドイツ語訳は、作家のヘルマン・ヘッセの父により訳されストットガルトのD・グンデルト社から出版された。同社のD・グンデルトの息子W・グンデルトは刊行より三年前に内村を慕って来日していた。ドイツ語版の肖像画は、おそらく息子のグンデルトと内村が相談の上提供したものではなかろうか。もとの英語版にもない肖像画である。グンデルトはドイツ語版の出た一九〇八年、内村に伴われて千葉県小湊にある日蓮の誕生寺を訪ねている。なおグンデルトは帰国後ハンブルク大学学長になり日本研究者として知られる人物となる。
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2017年7月28日 新聞掲載(第3200号)
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代表的日本人/岩波書店
代表的日本人
著 者:内村 鑑三
出版社:岩波書店
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