星を継ぐもの 書評|ジェイムズ・P・ホーガン(東京創元社)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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2017年7月31日

創元SF文庫
ジェイムズ・P・ホーガンのこと
ジェイムズ・P・ホーガン著、池 央耿訳『星を継ぐもの』

星を継ぐもの
著 者:ジェイムズ・P・ホーガン
出版社:東京創元社
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ジェイムズ・パトリック・ホーガンの代表作『星を継ぐもの』は、押しも押されぬSFの古典とよく言われる。初出は一九七七年、ホーガン三十六歳の処女作で、邦訳は一九八〇年だが、四十年を経た今も着実に部数を伸ばしている。

ホーガンは生まれつき下肢に障碍があって飛んだり跳ねたりできず、少年期はもっぱら読書に明け暮れて、これが博覧強記の下地を作った。手術が成功してロッククライミングを楽しむまでになったが、学校の旧弊な空気に馴染めず、十六歳で自分からさっさと退学した。それからはあちこち転々としながら趣味でSF小説に手を染め、スタンリー・キューブリック/アーサー・C・クラークの映画『2001年宇宙の旅』に刺激を受けて『星を継ぐもの』を書いた。

今では「巨人たちの星シリーズ」と呼ばれる三部作が好評を博したのを機に、以後は文筆に専念した。作品はいずれもSFとミステリーの折衷で、謎が提示される都度、解明へ向けた仮説が崩れ去って謎が謎を呼ぶ構成で終始している。つまりは全編が論理の遊戯なのである。

ホーガンの文章は何よりも向日性が身上で、これは作者の明朗な為人に由来する。そして、その明朗な資質の根底にホーガンのひたむきな人間肯定がある。地球温暖化や、大気汚染といった問題についても、ホーガンはとかく深刻ぶった報道の論調には与しない。危機に直面しても、人間は後へ退かないと信じているからだ。生命に脅威を与えるものに対して人間は敢然と戦う。その意思と気概がなかったら、人間は野に放たれた家畜同様、まるで無力だろうとホーガンは言う。これは単純な楽天論とは違い、かつてナイジェル・コールダーが『技術は突破する』で語った信頼の証しである。こう読んでくると、ホーガンは明日を指さす文明批評の発想でこのシリーズを書き起こしていることがわかる。その意味では『華氏451度』のレイ・ブラッドベリや、『人間がいっぱい』のハリイ・ハリスン、あるいは『イルカの日』のロベール・メルルに一脈通じるところがある。ホーガン歿してはや七年。この先とも、ホーガンが長く読まれることを願って已まない。
この記事の中でご紹介した本
星を継ぐもの/東京創元社
星を継ぐもの
著 者:ジェイムズ・P・ホーガン
出版社:東京創元社
以下のオンライン書店でご購入できます
2017年7月28日 新聞掲載(第3200号)
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