八重山暮らし④|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」

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八重山暮らし
2017年8月8日

八重山暮らし④

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黒島の爬龍船競漕。炎天下の砂浜を舞台にした奉納芸能も壮麗だ。
(撮影=大森一也)
目にいたいほど青くまばゆい海。天に届けとばかり、ふくらむ入道雲。陽に照らされ輝く砂浜の白さ。光がひしめく南国ならではのパノラマに包まれる。黒島のパーレークイ(爬龍船漕ぎ)のよき日、現世に在る自分がもぎとられ、古へと彷徨う。

脳天を突き刺す強い陽射しにあえぐ。それにもまして、島人のほとばしる情熱にめまいを覚える。豊年の世を意味する「ユガフユー(世果報世)」は海上の他界から、もたらされるという。黒島で豊年祭に舟漕ぎが行われる由縁だ。我が村にこそ、まっさきに豊かなユー(世)を招き寄せるため、えり抜かれた漕ぎ手が果敢に競漕に挑む。

二艘の舟が沖を目指し、波を切る。水飛沫をあげる櫂がひと揃いとなり、蝶の羽のごとく空中を舞う。舳先のおとこが、ひときわ長い棹を海に突きさしている。八重山の数ある競漕の中でも黒島だけにみられる独特の漕法だ。

浜辺では、村の勝利を願うおんなたちが太鼓を激しく打ち鳴らしている。両の手のひらを上げ、のどをふるわせ声援をおくる。競り合いながら沖へと向かった二艘の舟が、ほとんど同時に舳先を返す。その瞬間、砂浜で起きたどよめきが鼓膜にへばりついた。  

島人の待つ浜へと急ぐ櫂さばきがひとつになる。舟を迎える人びとの有らん限りの悦びが、白波と共に押し寄せてきた。
2017年8月4日 新聞掲載(第3201号)
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