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漢字点心
2017年8月8日

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「おはなし」「物語」を意味する漢字。音読みではふつう「タン」と読み、「冒険譚」「英雄譚」「動物報恩譚」などと用いられる。ただ、永井荷風の名作『ボク東綺譚』になると、「ぼくとうきだん」と濁って読むのが一般的となっている。

「譚」には、古い音読みとして「ダン」もあるので、「綺譚」を「きだん」と読めないわけではない。ただ、ふつうとは違う読み方をするということは、そこに何らかの意識がはたらいていようというものだ。とりたてて奇妙な事件が起こるわけでもないこの作品に漂うあの独特の味わいが、特殊な読み方を求めるのだろうか。

一方、奇妙な事件以外の何ものでもない江戸川乱歩の怪作『パノラマ島綺譚』(「奇譚」「奇談」などとも書かれる)の場合も、「きだん」とルビを付けてあることがある。これまた、ふつうの読み方だと理性が勝ちすぎて、おもしろくないからか。何せよ、どちらも唯一無二の物語であることは、間違いない。
2017年8月4日 新聞掲載(第3201号)
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