「ポスト真実」の時代 / 津田 大介(祥伝社)津田大介・日比嘉高著 「ポスト真実」の時代|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」

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読書人紙面掲載 書評
2017年8月7日

津田大介・日比嘉高著 「ポスト真実」の時代

「ポスト真実」の時代
著 者:津田 大介、日比 嘉高
出版社:祥伝社
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「ポスト真実 post-truth」という言葉が、昨年、世界各地で使われるようになった。ОECD(オックスフォード英語辞書)では、二〇一六年の「今年の言葉」に選ばれた。前年に比べて使用頻度が、二〇倍にもなったという。その背景には、イギリスのEU離脱とトランプ米国大統領選当選があることはいうまでもない。同辞書によると、この言葉は、次のように定義されている。「“世論を形成する際に、客観的な事実よりも、むしろ感情や個人的信条へのアピールの方がより影響力があるような状況”について言及したり表わしたりする形容詞」。

本書は、「ポスト真実」とは何か、世界の現状と日本国内の状況を詳細に分析しつつ、この時代とどのように向き合い、生き抜いていくかといったことについて提言した一冊である。そもそも「ポスト真実」の時代を生み出した、その原因はどこにあるのか――(1)ソーシャルメディアの影響(2)事実の軽視(3)感情の優越(4)分断の感覚と、四つの要素を著者のひとり日比嘉高は挙げる。インターネットによって世界は広がったように見えるが、逆に「人々は自分自身の快適な島宇宙に閉じこもる」(29頁)ようになってしまった。そこでは自らの「好み(感情)」に合う情報だけを選び取り、それ以外の情報を排除することが可能となる。もはや「真実か嘘か」という問題は二の次となり、「感情」が最優先される。その上で「敵か味方か」を峻別し、敵と見做されたものは徹底的に叩く。

このような時代に、我々はどう対処すべきなのか。基本的な態度としては、まず「一次資料」にあたること(ある人がシェアした情報を鵜呑みにしない)。自分自身で作った「壁」を超えて、一つの事柄(情報)の〈文脈〉を読み取ること(〈文脈〉をまたいでいく「読解力」を身に付ける)。そのためには、ネット空間を抜け出て、リアルな場で、異なった思考/志向を持つ人たちと触れ合うことも必要となるだろう。日本は、ますます「ポスト真実」の時代に向かっていくことが予想される。その時を前に、最低限知っておくべきことを丁寧に教えてくれる書物である。
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2017年8月4日 新聞掲載(第3201号)
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