ぼくのメジャースプーン / 辻村 深月(講談社)辻村深月著 『ぼくのメジャースプーン』 城西大学 高橋 佑太|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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【書評キャンパス】大学生がススメる本
2017年8月7日

辻村深月著 『ぼくのメジャースプーン』
城西大学 高橋 佑太

ぼくのメジャースプーン
著 者:辻村 深月
出版社:講談社
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本書は直木賞作家である辻村深月氏により書かれたものである。

主人公である小学四年生のぼくを語り手として物語は進んでいく。ぼくには母親の家系から代々受け継がれる特別な力があった。その力とは「Aをしなさい。そうしなければBになってしまう。」という条件を提示し、相手にAの行動をするかBの罰をうけるかを選ばせ強制的に縛るというものである。ぼくはこの力があることを周りに隠して生活していたが、ある時学校で飼われているウサギが医大生である市川雄太により切り刻まれ殺されてしまうという事件が起きる。この切り刻まれたウサギを発見したのはぼくの幼馴染のふみちゃんであり、ウサギが大好きで一番面倒を見ていたふみちゃんはショックのあまり言葉を失い話すことができなくなってしまう。事件を起こした市川雄太はすぐに捕まるが、罪状は器物損壊であり、ウサギの体と命そしてふみちゃんの心を壊した罪に対してあまりにも軽すぎる罰であった。ぼくはそのことが許せず、適切な罰を与えるために市川雄太に力を使うことを決める。

この物語では多くの場面が、親戚で唯一同じ力を持つD大学教育学部教授秋山一樹のもとで力の使い方を詳しく教わったり、どんな条件を市川雄太に提示するかについて話し合うなど、ぼくが市川雄太に対して力を使うための準備に費やされている。自分は本書を読んでこの秋山先生とのやり取りの中で小学生のぼくが罰について考えるということがこの物語の主軸となっていると感じた。どれほどの重さの罰が適切なのか、そもそも罰を与えることは正しいのかなど多くのことを秋山先生から問いかけられる。そしてそれらの問いに対して考え、どんな罰を与えるかぼくなりの答えを出し市川雄太と対峙する。

本来、どんな理由があろうと復讐という行為は決して許されるものではない。しかしぼくはふみちゃんのために市川雄太に自らの手で罰を与えることを決める。その行為は道徳的とは言えず、正しさという後ろ盾がない中でそれでも大切な人のために戦おうとするぼくの姿に、自分はその行いは間違っていると本当に言えるのだろうか、という気持ちになった。大切な人がある日突然、理不尽な悪意によって傷つけられるという現実でも起こるかもしれない状況で自分ならどうするかを考えながら、正解などない中でぼくがどのような答えを出したかを読んで確認してほしいと思う。

本書は物語全体を通して、「罪」と「罰」という重たいものを題材にしており、また先ほども述べたように小学生であるぼくが自分が持つ特別な力を使い、市川雄太に対して罰という名の復讐をどのようにするかについて一貫して考えている。そのため物語全体が暗い雰囲気になってしまい、希望のない物語なのかと思われるかもしれない。しかし決して痛みや悲しみだけではなく、ぼくのふみちゃんへの深い愛情や周りで支えてくれている大人たちの温もりや優しさを感じられる作品である。

この記事の中でご紹介した本
ぼくのメジャースプーン/講談社
ぼくのメジャースプーン
著 者:辻村 深月
出版社:講談社
以下のオンライン書店でご購入できます
2017年8月4日 新聞掲載(第3201号)
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